2002-01-01から1年間の記事一覧

『美しい暮しの手帖』

大橋鎭子と花森安治 この二人の不思議な出会いによって 類い希な雑誌が始まった。 敗戦間もないこの国で 着る物に事欠く人は多かった。 そして その様な中で 少しでもお洒落な感覚を 活かしたい 復活させたい人たちもいた。 初めは服の型紙集だった。 その資…

『工藝の道』柳宗悦

「心は淨土に誘はれ乍ら、 身は現世に繋がれてゐる。 私達は此宿命をどう考へたらよいか。 異る三個の道が目前に開けてくる。 現世を斷ち切って淨土に行くか、 淨土を見棄てて現世に走るか。 一つは夢幻に溺れ易く、 一つは煩悩に流されるであらう。 何れも…

ヨーガンレールの麻のソックス

装身具には殆ど興味ないけどハンカチと靴下は好きだ。次に帽子と靴。・・・指輪もピアスも関係ない。 かれこれ20年くらい持ち続けている靴下/ソックスがある。まだ原宿駅のすぐ近くにお店があった頃のヨーガンレールで買った。麻と綿の混紡の糸を殆ど手編み…

ACORN SOX/メイン州のフリース・ソックス

靴下といえば絹も木綿もウールも化繊も混紡も 普通は足を模した形に[編組 / knit]した物を思い浮かべます。 それに脱いだり穿いたりする上では伸縮性が大事になるので 通常は布切れを靴下に用いることは余りないでしょう。 《例外的な物として日本の足袋が…

『日夏耿之介宛書簡集ー学匠詩人の交友圏』

拝復、 拙詩幸ひにして大兄の愛読を得、小生の悦びこれにまさるものはありません。御言葉の如く、小生としても大兄を以て唯一の知己と考へるもの、昔「轉身」の頃より、貴詩のエプスリ(ママ)を理解することに於て、詩壇中小生最も大兄に親身の愛を感じ得る…

『若きパルク/魅惑』ポール・ヴァレリー

ヴァレリーを代表する二冊の詩集を中井久夫が譯し一本に纏めた。これはヴァレリーの本であると同時に 中井久夫の傑出した【著作】でもある。 例えば 『魅惑』の《蛇の企み》。このような言葉に僕は深く頷くだろう。 ・ 「空間」は神の間違ひ! 「時間」は神…

7ELEVENのPhilippe Starck

STRACK FOR SEVEN-ELEVEN 「フィリップ・スタルクデザイン 機能性と使いごこちを追求した おしゃれなステーショナリー&バスグッズ」 1998年夏の終わり セブン・イレブンは日本限定商品を スタルクと共同開発し 発売した。 フルラインナップで全25商品。 未…

絵本『おみまい』

予兆に満ちた 現代[NIPPON]絵本の傑作が 矢川澄子ぶん 宇野亜喜良え 『おみまい』だ。 だあれもいない みちばたの かきねにさいてた あかいバラ でも やっぱり みつかって しまったの ・ おばさんの病気見舞いに行く途中の少女は 庭に植わっていた薔薇一輪を…

SALOMON / MADE IN ITALY

スキーやスキーブーツを初めとするスポーツ用品メーカーのSALOMON社が フランスの企業なのかイタリアの会社なのか 僕は好く知らない。 僕が もう数年前に バーゲンで買った軽登山靴が その混乱を起こした原因だ。 箱には Printed in FRANCEと印刷されている…

神秘を語るグレートデザイナー/Ettore Sottsass

長年に渡りミラノでインダストリアル・デザイナーとして一流の仕事をされ、 『ドムス』誌や『インテル二』誌にも在籍した デザイン・ジャーナリストの佐藤和子さんのインタヴューに、 間違いなく現代の最も重要なデザイナー エットーレ・ソットサスはこう応…

DUOFOLD / MADE IN U.S.A.

ここ何年か 冬になると 合衆国ナショナル・スキーチーム御用達というデュオフォルドの‘上下’を服の下に着る。 ・ 若い頃 なんだか意味もなくラクダ(染めてないカシミヤ)の下着・上下揃いに憧れたりしたなんてことを思い出しながら・・・ (高いのでは30000…

MOONSTONE / MADE IN U.S.A.

服にそれほど興味のないボクでも ここの真っ黒なADVANTAGE PARKAの袖に初めて手を通した時は・・・凄いと思った。 軽さ しなやかさ 機能性 etc. デザインというより 服なのに このジャケットには優れた建築のような「設計思想」があった。 立体裁断などとい…

『詩の者籍國重二』/著郎次米口野

詩人 ヨネ・野口と云っても多くの人は知らないだろう。 イサム・ノグチの父。 といっても父親としての義務は全く果たさなかった 不実で卑劣な助平親爺である。 この人物のことが 頭を掠めるたびにボクは ある種典型的な日本人の醜い姿 倫理性も論理性も何処…

『原弘と「僕達の新活版術」/活字・写真・印刷の一九三〇年代』

あまり聞き慣れない「新活版術」とは1920年代から30年代にかけてドイツ、オーストリア、ハンガリー、チェコスロヴァキアなど中欧諸国を席巻した国際的な近代タイポグラフィ運動“ノイエ・テュポグラフィ”を訳した言葉だ。 それにしても 良いタイトルだ。読ん…

Paul Klee/“旅の畫帖”

20世紀の画家の中で 最も画題の付け方が詩的で 巧かったのが パウル・クレーだ。 彼には言葉というものが コンパクトに何を持ち運んでいるか 分かっていた。 だからパウルは 言葉に対して凡庸な感覚の画家なら単に『自画像』とするだろうペンによる素描に 《…

【声】

声とは ここから 越えて行くもの。超えるもの。請うこと。乞うこと。 人を恋うこと。 やがて 声色(コワイロ)となって 壊すこと。怖がること。強(コワ)ばること・・・ ・ 声は 眼と並ぶ 魂の貌。 顔が 眼なら カオガ ガンナラ 声は 性で聖 聖性だ。 コエ…

【顔】

夷齋學人こと石川淳は『夷齋筆談』の冒頭に置いた《面貌について》で こう述べている。 「黄山谷のいふことに、士大夫三日書を讀まなければ理義胸中にまじはらず、面貌にくむべく、ことばに味が無いとある。いつの世からのならはしか知らないが、中華の君子…

【面】

お面・仮面・能面から面子(メンツ)・素面(シラフ)・面(ツラ)構え・面が割れるなど 面という字の意味や読み方使われ方は とても多面的で・オ・モ・シ・ロ・イ。 では 「面(メン)とは何か」と 正面切って考えると なかなかその答は 見付からない。 椅…

【貌】

面貌 容貌 美貌の貌である。一字なら 多くのひとは何と訓(ヨ)むのだろう。やはり「カオ」だろうか。 「面」が主として 外側からのカオを表すとしたら 「貌」は内面に言葉の重心を移しているのかもしれない。 内部から 顕れるものが「貌」の実体であるだろ…

B-52's

【The B-52's】 スティーブ・ジョブズはB-52'sファンなのだろーか? 最初のiTunesに彼等の曲が含まれていたから オヤッと思った。 どちらかと言えば 髪型だけ有名で それほど大ヒットを飛ばしたグループじゃない。 ボクのなかでは 大型戦略爆撃機だ。 ・ 追…

神秘主義思想家としてのJean-Luc Godard

一年に一度はないほど ごく稀に ECMから出た〈世界初の完全サントラCD〉 ゴダールの『ヌーヴェル ヴァーグ』を掛ける日がある。 今日がそんな日だ。 私は盲人になって 映画を見ている自分を想像してみる・・・ 犬が吠え・・・クルマの音が遠ざかり・・・ 電…

齊白石

齊白石 / Chi Pai-shih = Qi Baishi は 欧米や日本で最も良く知られた 20世紀中国を代表する文人画家でありながら 今でも誤解に満ちた扱いをされるケースがある。日本ではまず名前が間違ってしまう。 齊と齋は全く違う文字なのに 画数が多ければ 丁寧で偉そ…

中國歴代皇帝肖像/錦繍中華之一頁

子供でも 秦の始皇帝は知っている。若者とそれに毛や黴が生えたようなVACAMONOでも ‘ラストエンペラー・溥儀’の名は云えるだろう(笑)。 でも東アジアに生きる〈大人〉なら 隣国の皇帝をせめてあと三人程は憶えていて欲しい。 「風流天子」こと11,12世紀北…

康煕帝

虎は死して 皮を残すといいますが 清朝の愛親覚羅氏 聖祖仁皇帝 康煕帝は『康煕字典』を残して永くその名を留めることになりました。 その『康煕字典』の文字を基本に 様々な修正を経て作り上げたのが現在 日本で広く使用されている「明朝体活字」です。 少…

顔眞卿

世界中がどれほどデジタル化されても 日本が漢字文化の国である限り 読み方だけでも憶えておいて欲しい人名のひとつ。 「がん・しん・けい」と日本では呼びます。 現代の漢字/活字/フォントの基礎を作ったとも云える 西暦8世紀 唐代の官僚にして名筆家。 パ…

書法 / Calligraphy of the Masters

広い意味での中国が発信するサイトには 欧米や日本とは 又違った美意識があります。欧文と漢字との共存を目ざしている点で 此のHPは 参照するに価します。 ・ かつて中国人が日本に来て 驚くことのひとつに『書道』という言葉があったと云います。 日本では …

國立台湾大學網路教學過程中國美術史

齊白石に併せて石濤か金農を紹介するつもりで画像を探していたら 中國美術を概観するのに非常に優れた此のサイトを見付けた。 奥が深い上に 面白いの一語。 ウーン こんな好い 場所を取らずにしかも無料の「入門書」があったら この先日本の美術書出版はどう…

人工水晶体/眼内レンズ

吉行淳之介さんの小説だったか散文だったかに『人工水晶体』という題名の作品があって綺麗なタイトルだなあと思ったことを憶えているがまさか自分でもお世話になるとは夢にも思わなかったのはそれが人生という物だからだろう。

SF6 /(六フッ化硫黄 )

眼球の中にあって容積の大半を占める“硝子体”はゲル状の物質で 他の物質による代替が可能である。だから網膜剥離の手術では硝子体を抜き 代わりに一旦【SF6】六フッ化硫黄ガスを充填する。このガスの浮力を応用して 剥がれかけた網膜を 再び元の位置に押しつ…

Isamu Noguchi / “ 汲めよ一碗の茶 ”

汲めよ 一碗の茶を 呑めよ 一掬の宇宙を また 逢うことも あるだろう 光となって ・ 一瞬の 光閃 即ち 石よ。 朝光伴鳥即興頌歌。 1953年に大下正男の美術出版社から出た『NOGUCHI』という本がある。 序文/瀧口修造 レイアウト/亀倉雄策 写真/土門拳 他。 印…