2002-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『食卓にて、夏の終わりに』/駒井哲郎と‥

駒井哲郎の名を最初に知ったのは 10代も終わりに近付いた晩い夏だった。 手元に今もある『季刊版画5 秋』1969 が其れを証している。 「一言に言へば、彼の顔貌は、写楽の描く役者の顔そのものである。」 作家訪問で川合昭三は 青柳瑞穂の文章を冒頭からやや…

六尺/越中/紙オムツ

今和次郎の考現学ではないが 多少とも温泉や銭湯に通っていると 否が応でも詳しくなるのが同性の下着である。 そして下着は時代を映す。 世代を 社会を 衣服よりも正直に映す。 色気のある話にはなりそうもないので 妙齢のご婦人にはあまり勧めない(笑)。 …

石鹸筺

温泉や銭湯で多少とも粋がる 部分があるとすれば それは石鹸の入れ物、容器、ハコである。 ところで 石鹸箱と書いたのでは何だか アメリカの子供の遊び SOAPBOXRACERになってしまうし 笥や箪では難しすぎるし筺か函でしょうね この場合。 函は少し大きい感じ…

最初に自分で買った歯ブラシ

ボクは少し変わった子供だったから その豚毛でもナイロン毛でもない 「狸の毛の歯刷子」なる物に コロリいかれてしまった(笑)。 是が非でも手に入れなきゃと決意して ありったけのお小遣いを掴んで 薬局へ行った。 意外とあっさり手に入ってしまった。 メ…

〈氾濫/光に於ける高貴な漂流〉加納光於の方へ。

1971年に工房を船出した神秘な方舟 大岡信との共同製作部分を納め有つ函 『アララットの舟あるいは空の蜜』を 南画廊で見たのは今から30年も昔 72年の 季節はいつだったか。 それは見るというより視認というものだった。 未だ時間を吸い込んでいないそれは …

南画廊/志水楠男さんから貰った《黄よ。おまえはなぜ》

加納光於の『アララットの舟あるいは空の蜜』を 幾度か眺めてから僕は他の作品を見ていたと想う “ボンヤリ/クッキリと”いつもの方法で やがて 画廊の人が帰る様子の僕に 少し待つように云い これはサムの個展のとき壁に貼っていたものだから 少し汚れている…

余白に書かれた詩的沈黙/瀧口修造の実験。

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〈神秘をコップに挿した〉長谷川潔

この明治の日本が生んだ偉大な藝術家を どのように説明したらよいのか。 1918年27歳で横浜港を出帆し、 以来1980年に89歳で巴里に没するまで 一度も故国に還らなかった 強靱な意志の人。 遺著『白昼に神を視る』の中で 彼は、自然と神と神秘を こう述べてい…

硝子/glass/瑠璃/玻璃

ガラスは少し不思議な物質で 文字も呼び方も沢山ある。 但し瑠璃にしても玻璃にしても 元々の意味は必ずしもガラスだけを意味しない。 梵語でラピスラズリだったり、水晶だったりする。 更に興味深いのは 硝子は普通の状態では極めて不安定な物質と言う事。 …

玻璃彩版

木口木版やドライ・ポイント、エッチング、 ビュラン、アクワチント、メゾチント、 リトグラフ、シルクスクリーン等といった 版画の技法にかなり詳しいヒトでも、 【玻璃彩版】という技法の事は知らないように思う。 実は僕がそうだった。 求龍堂から昭和四…

『春と修羅』より/因果交流電燈のひとつの青い照明です。

ああ何という事。この人の奇跡のような仕事の前に わたしは言葉を喪いひたすら息を呑むしかない。 (ひかりはたもち その電燈は失われ)

EDISON LAMP/エジソン電球

1879年10月21日。 トーマス・エジソンの手によりカーボン電球が誕生。 フィラメントに京都の竹が使われた事は、 少なくとも日本ではあまりにも有名なエピソード。 それから120年余。 私たちは 寧ろ世界から【闇】を喪いつつある。 パーソナル・コンピュータ…

鳳凰

麒麟と同じく 鳳凰という伝説上の動物がいる。 日本では麒麟はビールで 鳳凰はお茶ならぬ宇治の平等院鳳凰堂で 親しまれている。 所で一つ問題があって それは鳳と凰が雌雄の一対で有る事を 無視しがちな事。 だから〈鳳凰〉という種類の鳥がいる事になった…

蟷螂

私は何かと蟷螂とは縁があるようだ。 昔持っていた熊谷守一の書は 『蟷螂がいよいよまかり出で候』 という 此を書いた最晩年の心境と関係あるらしい、 よく考えると少し不思議な物だったし…… さて。 昨年か一昨年の事。 温泉に向かう山道に一つの色鮮やかな…

Christo and Jeanne-Claude

少し年季の入った現代美術ファンなら 単に「クリスト」で記憶しているだろう。 しかし今は「クリスト&ジャンヌ=クロード」 が正しい呼び方となっている。 (正確には94年から「Christo&Jeanne-Claude」 になりました。) 世界に70年代の始まりを告げた あの…

GILBERT and GEORGE

ジョージは1942年プリマス生まれの英國人。 ギルバートは1943年生まれのイタリア人。 二人は倫敦のセント・マーティンズ美術学校で 1967年に出会いました。 少しばかり歳を喰った学生だったんですね(笑) あ、失礼致しました。 その頃二人が学校の屋根の上…

Liberty print/リバティ百貨店

殺伐とした時世だからこそ 『モードに見るプルースト』 (長谷川富子著・青山社)なんて本を 典雅に斜め読みしていたら 写真にこんなキャプションが。 《リバティのネクタイに椿の花をつけ、気取っている プルースト(1891) 》 ホホーッと感心していると 本…

2801Plus・・

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Giorgio Morandiの光と匂い。

モランディに 惹かれるようになったら、 あなたは 大人になり掛かっているのかもしれない。 或いは 此の、大人になることが困難な国で 本当の大人に なれるかもしれない。 彼の 光と風の匂い そこにあることの神秘 地上にとどまりながら この上なく静かに息…

『真理のことば』中村元

ダンマパダ(Dhammapada)の名で 南方アジアに古くから 親しまれた教典。 『法句経』(ほっくきょう) として我が国でも 大正年間から 翻訳され 読まれてきた。 中村元先生の訳文は パーリ語の原文の持つ 簡明さ(だからこそ愛誦された)を伝える。 『その簡…

『超越のことば』井筒俊彦

信じられない《「不可視界」の「濃霧」の奥から、 神の声が聞こえてくる。 神の声、神のコトバ。 ヤスパース的な表現を借りるなら、 神が人間に向かって「暗号」を送ってくるのだ。》 20世紀はもっと 精神的に深く豊かな世紀になる筈だった。 我々は足踏みし…

老眼鏡について私が知っている二、三の事柄

40を幾つか超えた頃 世界が急速に輪郭線を失い始めた。 おまけに何だか暗い。 黄昏時、 或いはトワイライトタイムを 私は好きな一刻として愉しんできた。 世界が光を減少させるに従い 私の心からも光が失われるようになった。 昏い…… 夕方の街灯は、五重六重…

少し昔のBarbour/Logomarkの変遷

今のBarbourには所謂ROYAL WARRANTが三つ附いている。 左から順に女王陛下、エジンバラ公、プリンス・オブ・ウェールズ 少し前までは二つだった。女王と大公。 その前は一つ。大公だけ。 (女王の紋章を見たければ英國大使館に行くといい ウンザリするほど大…

Krenit Bowl by Herbert Krenchel

デンマークやイタリー スウェーデンや仏蘭西 ノルウェイや独逸の工業生産物 にあるのが デザインだとしたら Made in NIPPONやKOREA.TAIWAN にあるのは 何だろう。 同じようなとは云えない 断じて云えない 彼岸此岸の 工業生産物の美的水準の差。 アジア人に…

AstonMartin DB7 Zagato

1961年に僅か19台が生産された AstonMartinDB4GTZagatoは、 アストンマーチンの歴史の中で 最も美しい車として知られている。 watakushiの乏しい記憶では3年ほど前 工場から当時のパーツが総て出てきたとかで 2,3台のDB4GTZagatoが アストンマーチン社と ザ…

戴冠する幼女/草間弥生

1980年代の初め頃、竹橋の国立近代美術館で 【一九六〇年代-現代美術の転換期】 という回顧展があった。 ネオ・ダダ、ハイ・レッド・センターを始めとする 〈反芸術〉の作家達の作品が一堂に会した画期的な 展覧会だった。 ギューちゃんこと篠原有司男や工…