戴冠する幼女/草間弥生
1980年代の初め頃、竹橋の国立近代美術館で
【一九六〇年代-現代美術の転換期】
という回顧展があった。
ネオ・ダダ、ハイ・レッド・センターを始めとする
〈反芸術〉の作家達の作品が一堂に会した画期的な
展覧会だった。
などの反抗的で反社会的、汚い作品とその作家達が公権力に認められたのは、多分これが最初だった。
そのオープニングの日
かつての反抗的な反/芸術青年達は
幾分の晴れがましい気分とともに
やや老いて其処にいた。
東野芳明氏もまだ元気で雑談を交していた。
戦後の前衛達が立って歩いて挨拶をしている。
少し古びた現代史たち。
ボクは今よりずっといかれポンチだったから
廃墟を背負った前衛たちに敬意を表して
鍔の広くないストローハットに
フェイクのプラスティク製
果物を飾っていた。
林檎オレンジ葡萄
バナナ…。
誰かと挨拶して
さて。
「あらァ 可愛い。どうしたの それ。
………被ってみて良いかしら。
ありがとう!」
玩具の果実のついた帽子を嬉しそうに被る草間弥生は
自己戴冠する童女だった。