齊白石 / Chi Pai-shih = Qi Baishi は 欧米や日本で最も良く知られた 20世紀中国を代表する文人画家でありながら 今でも誤解に満ちた扱いをされるケースがある。日本ではまず名前が間違ってしまう。
齊と齋は全く違う文字なのに 画数が多ければ 丁寧で偉そうに見えると思うのか 作品集の名前ですら『齋白石』と書かれてしまう場合がままある。(『斉白石』は略字であって誤りではない。)
生没年も太陰暦と中国式年齢の数え方が独特なために大変ややこしいことになる。
没年に至っては 占い師の忠告によって「75歳は悪鬼の禍いをなす年である」と
「飛び級」して74歳から いきなり自分の年齢を77歳に変えるなどの「術」を使った為に欧米の権威ある美術館でも混乱していた時期がある。
さらに 精確には93歳と9か月で亡くなったのに 『九十七歳』と書いたりしている為 未だに様々な誤解が払拭されない。
香港中文大学附属文物館館長の高 美慶さんの言葉を借りるなら
《「天を瞞して海を過える法」を用いたのである。》
西暦1864年1月1日生 1957年9月16日没。
(因みに中国で太陽暦が使用されるのは孫文の中華民国建国/1912年から。)
なにやらテオ・アンゲロブロス監督の『シテール島への船出』で 天を指さし
“三回 騙してやった!”と叫ぶ主人公の老革命家を想わせるような 愉快な如何にも文人らしいエピソードである。
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確かにこの傑物は 清朝/中華民国/中華人民共和国 の過酷な三代を
「無事これ名馬」とばかりに 飄々と生き抜いたのである。
絵を描く人間として 生命力ではパブロ・ピカソを上回り
昆虫 小動物 草花 が特に佳い。
現代篆刻の始祖として自刻雅印も高く評価されている。
ふふふのふ。
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というような訳で どうぞ文人畫を愉しんでください。