『原弘と「僕達の新活版術」/活字・写真・印刷の一九三〇年代』

あまり聞き慣れない「新活版術」とは1920年代から30年代にかけてドイツ、オーストリア、ハンガリーチェコスロヴァキアなど中欧諸国を席巻した国際的な近代タイポグラフィ運動“ノイエ・テュポグラフィ”を訳した言葉だ。

それにしても 良いタイトルだ。読んだ時の音の響きもいいし 文字の据わりもいい。

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美しい 題名と 装幀。 芳醇な 文章と 内容。

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少し昔の写真や本や雑誌やポスター 或いは印刷物/建築に至る視覚芸術に興味のある人なら 懐かしい人たちが 若い日の姿で 次々と現れ 仕事に励んでいる様子を 目の当たりに眺める想いがするだろう。 

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山名文夫 亀倉雄策 村山知義 野島康三 木村伊兵衛 山脇巌 堀内捨巳 名取洋之助 濱谷浩・・・・

歴史の一齣としての『日本工房』と『中央工房』

井上嘉瑞が日本に持ち込んだ新しい欧文タイポグラフィ・・対外宣伝誌『フロント』・・文化社・・

坂口安吾の『白痴』『堕落論』・・

この本で初めて知る 林達夫の強力な推輓と独特な友情。 雑誌『太陽』の創刊に至る経緯・・・

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視覚的な「仕事」に興味ある人間にとって これほど面白い評伝(ノンフィクション/ドキュメント)は 稀である。それは 人物その物の魅力 と時代の面白さが互いに影響しあいながら 複雑に しかも絶妙に組み合わさっているからだろう。

この傑出した評伝/大労作を書いた 著者・川畑直道氏に敬意を表したい。

          

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インターネット DTP オンデマンド出版 デジタルフォトなど・・・1920年代30年代を遙かに超える大きな変革の時期を 私たちは いま迎えている。

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この時代だからこそ いでよ新たな 原弘 木村伊兵衛 名取洋之助・・・・