林住亭日乗

サボア・ヴィーブルから正木春蔵の染付の中皿 二点四枚がとどいた お店の表記どおり書くと「染付八角銘々皿」と「染附 松濤文皿」 SAVOIR VIVREといえば まだアクシスビル3Fに移るまえ 六本木のテレビ朝日通りの小さなビルの中二階にあった 師走も暮れかけた…

「臨終」観察日誌

「死は、前よりしも来らず。かねて後に迫れり。」 徒然草 一五五段 寂滅がひたひたと迫る ふとG・ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』を思う 。。。 〈新潮・現代世界の文学〉シリーズで読んだ 調べると1983年 もちろん巨匠ガブリエルは生きてい…

『終焉する航海日誌』  消滅点へ向かう遺言状として

約束されたバニシングポイントへ向かっているのは 「関心空間」だけではない ニッポン全体が消滅へ向かって走っている 。。。 ここが消えたあと たとえば 来春までには「出版恐慌」が発生するだろう 書店が次々と消え 雑誌が廃刊に追い込まれ 出版社が倒産し…

The Last Waltz

♬ 十月朔日 とうとう最期の一箇月 神無月がvanishing pointへ向けてスタートした ・ すべてはかりそめにすぎない。おぼえる者もおぼえられる者も。 骨で城がつくられ それに肉と血とが塗ってあり 老いと死と高ぶりとごまかしとがおさめられている ねえ、あん…

『入江相政日記』とサミュエル・ベケット

多木陽介の優れたベケット論 『(不)可視の監獄:サミュエル・ベケットの芸術と歴史』 読んでいると 『入江相政日記』全六巻が届いた この日記が刊行された1990年ころはまだ新聞を読んでいたから 出版時を覚えている すでに四半世紀も前である それがヤフオ…

蒼氓

《 僕等は皆 逆立ちの Dancer 押し黙ったまま ただ 踊る Step も決めず 冷えた身体 揺らすだけ 窓の外は闇 窓の外は 闇 》 山下達郎 『DANCER』 この七〇年代の名作というしかない絶唱は『SPACY』LP 試聴盤で77年に聴いてから 何度聴いても こころ動かされ…

一億人が「ルンペン•プロレタリアート」になっていく社会 。。。

いまや 日本政府は意図的に貧乏人を大量「増産」している 増やすのは まとまったカタマリとして切り離し アッサリ棄民するためである ところが ルンプロ諸君 ルンペン予備軍諸君はそれに気がつかない ルンペンどころか 笑止なことに 彼らは自分がエリートの…

「石板食堂」にて

melittaで入れるコーヒーを準備してから 石板に色チョークで その日のメニューを書き出す たとえばこんな具合 「 珈琲 野菜ジュース クロワッサン ぬか漬と茗荷の冷たい麦茶漬け 豚肉とキャベツの味噌炒め 中華風スープ 搾菜 」 「 カフェオレ プチパン V.J.…

珈琲カップのなかに無敵艦隊を視る ひとりの狂人として

プルーストのマドレーヌではないけど 今朝の珈琲時間 クラッカーにイベリコ豚のレバーパテつけて 口に運ぶうち 身震いして むかしカール五世だったことを思い出した のではない スペインがある時期 世界の覇者だったことをアナムネーシスしたのだ 。。 コロ…

『暑いからヒステリーでも勉強しよう』と植草甚一は言わなかった ケド 。。。

連日こんなに熱いと 暴飲暴食では収まらず ぼくのような温厚篤実な怪獣でも暴言を吐きたくなる / 笑。 インターネットの面白さはアレクサンドリア図書館が裸足で逃げたくなるような 生成し湧出する情報の無限さであり その完璧な玉石混交ぶりにある もちろん…

『 國 畜 論 』 「絶対愚民」形成システムに関する一考察

‥‥‥ やがて死ぬ けしきはみえず 蝉の声 ‥‥‥ おおくの人は凡庸な趣味嗜好をもち こころもとない知性と脆弱な能力のなかに生きる それが常民の実像であり 何百年あるいは千年単位で続いてきた事象である そのことにさしたる疑義はない 「騙されて生きる」 その…

イギリスにおいて画家とはならず者の謂である。

『ルシアン・フロイドとの朝食』を読んでいる 何度か西村画廊で見て 絵は知っていたが ジグムントの孫がこれほど面白い人物だとは思っていなかった 。。。 これまでに読んだ画家の伝記では フランシス・ベイコンとアルベルト・ジャコメッティが ディヴィッド…

消える壁新聞『寒心空間』として 。。。

ネットで拾った言葉から 《 ネトウヨが増えた理由は別に愛国とか関係ないんだよね 単に日本人が集団リンチを好み、陰口を叩いたり、誰かを吊るし上げて罵倒し中傷することが好きな陰湿な性格だというだけ そして意見の正しさ・間違いには関心がなく、問題を…

Back in The U.S.S.R.      CCCP ソ連邦製造のウォッカ

《 あそびをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけん 。。。》 ぼくは共産趣味者でもなければ 主義者でもなかったが メスカル蒐集の合間に ふと新しいあそびを見つけた いまでは考えられないが 60年代から70年代の東京には 店舗数では本格中華料理と…

古鐔と鹵簿 あるいはヨーガン•レールのシュルレアリスム

いわゆる「御料車」の歴史は大正元年に輸入された英車ディムラー 二台にはじまる 同年1912年製造の 一台はリムジン もう一方は後部にオープントップを持つランドレーだった 近現代において鹵簿とは近衛騎兵の儀仗をともなう行幸または行幸啓をさす 「天皇略…

渺茫たる恍惚   日日ふたつ 。。

陋屋に 朋 ふたつあり 書帙に痴れ 独酌に揺れる 日々は渺茫たるかな いたるところ明日の青山 茅舎に座して 墳墓の蒼きを識る 今日 寿岳文章『ブレイク論集』届く 限定三百冊の内 第105番 非売品 昭和六年十二月二十日刊 編輯兼発行者は 京都市下鴨膳部町在住…

水無月のトートバッグ

隠遁または隠棲といっても良かったし幽居 あるいは逐電 出奔 ドロップアウト なんと呼ぼうとも 四〇歳を待たずして濁世から遁走した いわば世捨て人 そのような「まつろわぬ老荘ヒッピー」「天稟ビートニク」が いまさら国家社会と俗世間を論難するのも狂逸…

花森安治とJ. D. Salinger  あるいは戦争とKurt Vonnegut 小津安二郎

汚屋敷に籠城していた九十二歳 家のなかで転倒し恵比寿の厚生中央病院に二ヶ月 一人暮らしはもう無理と若い医師に宣告され さしもの桜蔭継母も白旗を掲げる 生さぬ仲である家人が 実の孝行娘でもできないほどの奮闘を持続 新築平屋の小ぢんまりした温泉付き…

匙と靴下     Christofle or Hanes

明治二十一年のセントルイスに生まれ 半世紀前のロンドンで死んだ ある高名すぎる詩人によれば 「四月は最も残酷な月」だという その四月はおわった 。。。 だが しかし でも でも 至るところ 放射線が飛び交い 放射能が舞い散る この極東の小国では いまや…

宇宙こそ alta moda / 究極の註文服である

書痴 書狂にとって ある本の隣に何を並べるかは 美意識に関わる深刻な問題 かつ神秘的な悦びである 大型本を横位置にし載せてある棚の上に そこだけ岩波文庫が置かれた一角がある 岩波文庫 白127-1 から白127-10 まで マニアしかわからないだろうが『裏切ら…

C.G.Jung  Robert Frank  J L G   Giacometti Le Corbusier Tinguely  Klee

[Mai 68] 「68年5月革命」研究は 「ナチスドイツ」「スペイン市民戦争」とならぶ ぼくの二〇世紀研究の重要なセクション コリン・コバヤシ訳 ローラン・ジョフラン『68年5月』を読んでいて ふとこんな部分に眼が停まった 《 ルーアンのそばのルトレでは、…

象牙色の鹿皮を纏った吉田五十八

著作を通した建築家・吉田五十八との邂逅は三〇歳を少し超えたばかりだった 若かったから臆面もなくこんな風に書き残している 《 吉田五十八氏の『饒舌抄』(新建築社)を読む。徒然草に通じる面白さ。吉田五十八という人はわかってらっしゃる方だ。》『狂書…

夜が、明けたら  夜が、あけたら  よが、あけたら 。。

払暁までは まだ四〇海里もある 午前二時半 渇きに目が醒め 温泉水の冷たい麦茶をのむ ついでに「ロキソニン」を 痛風の発作回避と炎症軽減に一錠。 なかば意識的に 二〇十一年三月十一日から 時間が止まったように 三百六十五日 毎日酒を飲んでいる 慰藉か…

キンミヤ

温かくなったので髪の毛を短くした 間歇的に通う顔そりシャンプー付き千五百円床屋の待合室に『週刊漫画ゴラク』がある こんな時でもないと手にしないのでまとめて数冊読む なかなか愉しいのだが「リバースエッジ 大川端探偵社」がなにやら琴線にふれた チンドン…

ドジョウ地獄ならぬ「茹であがった老人」についての発作的バリバリ讒謗罵倒観世音/ 笑。

温泉で七〇代後半以降の「本格老人」と話していて 本心から驚くことがある 彼らにはテレビドラマと現実の区別がないのだ 。。。。 「歴史ドラマ」「大河ドラマ」「朝ドラ」は それが どのように恣意的に改竄・脚色され ひとびとのナルシシズム/自惚れを満足さ…

「未来食堂」と『われわれの友へ』と 。。

ぼくは ほんの子どものころから 筋金入りのペシミストでした 戯画化していえば あの「地獄の門」で キューピーが「考える人」のポーズで足下に地獄を見ているような あるいはデューラー「メランコリア」の羽のある憂鬱な幼児のように 。。。/笑。 でも 去年…

「意識内戦」による大量の廃兵 。。。 弊れつつある社畜・愚民社会

「意識内戦」とは社会的な幻想の分裂した状態 破綻したムラの共同性から切り離され 孤立した情緒と神経における暗い葛藤 要するに回避不能な「綜合意識混濁」の病理をさす造語だ あるいは いまだ見えざる蜂起・内戦の初期段階 無意識層を含んだ大崩壊への前…

ロンメル 中井久夫 ジョン・キーン :「戦争」: 引用の織物として

《 身の毛もよだつような恐ろしい夜が、一分、また一分と、ゆっくりと時を刻んでいく。真夜中すぎ雨は 上がるが、その代わりに今度は、身を切るような冷たさの激しい風が吹き荒れる。これが濡れた装備のま ま座っていることを不可能にしてしまう。われわれは…

If P , or Q    もし ノーム・チョムスキー あるいは 井筒俊彦 。。

《「もしPならば 、あるいはQである」という文が存在しないという事実は、その言語全体に関しての 、、、 》 チョムスキーの『我々はどのような生き物なのか』の一節にあった この高度で良質なナンセンスのような「存在しない文言」が 妙に気に入ってしまっ…

粗い編み目の雑嚢に入った本あるいは記憶

かつて定義したところによれば 「書籍とは外部にある記憶である」 やや神秘的なニュアンスを持つ定義/aphorismだが 外部とはいっても「記憶」だから「自分にないものは理解できない」を重要な含意とする それは一〇〇〇年を経た古典だろうが 出版されたばか…