宇宙こそ alta moda / 究極の註文服である
書痴 書狂にとって
ある本の隣に何を並べるかは 美意識に関わる深刻な問題 かつ神秘的な悦びである
大型本を横位置にし載せてある棚の上に
そこだけ岩波文庫が置かれた一角がある
岩波文庫 白127-1 から白127-10 まで
マニアしかわからないだろうが『裏切られた革命』に始まるトロツキーの文庫版著作一〇冊
ロシア革命にさほど興味のない ぼくは
この岩波文庫一〇冊だけは著者と内容・ブックカバーの背中のグレーを好ましく思い
刊行前から初版第一刷で揃える計画をたてた
文庫初版でレフ・トロツキーを揃える
かなり曲折した「いきがりの構造」をもった趣味だが
これは刊行時を外すと ほとんど不可能になる道楽だ
いま奥付を見ると『裏切られた革命』が1992年2月17日 第1刷発行
最後に出た『わが生涯』下巻は 2001年3月16日 第1刷発行
このささやかな蒐集にほぼ一〇年を費やしたことになる
「遊び」とは 「趣味」とは そういうものである
時間を遊歩する
書物収集家とは 時間の遊歩者/フラヌールなのだ
いま岩波書店ブックサーチャーで調べると『ロシア革命史』全五冊
『わが生涯』上下二冊 合計七冊が品切になっている
フフフ 密かに快哉を叫ぶのはこんなときである/ 笑。
前説が長くなったけど
トロツキーの一〇冊とともに並んだ本が重要なのだ
岩波文庫 白225-1
オーギュスト・ブランキ著 浜本正文訳 『天体による永遠』
がそれである 。。。
カバーにブランキを紹介することばがあって
その最後に《 ベンヤミンを震撼させたペシミズムの深淵。》
まさに本読みの琴線に触れすぎる言葉
極めつきの惹句/殺し文句がある
多層的多重的 重層する宇宙
一瞬ごとに永遠を懐胎した宇宙と天体 無限増殖を繰り返す全人類
《 地球も、こうした天体の一つである。したがって全人類は、その生涯の一瞬ごと
に永遠である。トーロー要塞の土牢の中で今私が書いていることを、同じテーブル
に向かい、同じペンを持ち、同じ服を着て、今と全く同じ状況の中で、かつて私は
書いたのであり、未来永劫に書くであろう。私以外の人間についても同様である。
すべての地球は、そこで再生しそして再びそこに墜落するために、次から次へと
復活の炎の中に呑み込まれてゆく。それは永遠に倒立を繰り返して自己を空/カラにする
砂時計にもにた、単調なサイクルである。新しいものはいつも古く、古いものはいつも新しい。》
「Ⅷ エピローグ」より
過去にも未来にも永劫累積化するデジャヴュとシンクロニシティ
空間だけの無限ではなく 数量的にも無限な宇宙 。。。
チョムスキーも断言していたように「ほとんど無限」はあり得ない
ない 断じてない
永劫の無限か そうでなければ有限があるだけ
この本は短いテクストからできているが極端に重要な文書だ
優れた感受性のある人間なら 高性能の知的能力を持つなら
想像力をホントの全開にするため
教育や国家 制度や陋習によって陰険に仕掛けられた
脳内リミッターを解除するため
全身全霊で読もう
☆
膨脹はするものの「全宇宙はひとつしかないもの」と 。。。。
白衣を着た占い師にすぎない科学者たちに示唆されて
われわれは抑圧的に 誤解することを強いられてきた
宇宙はプレタポルテやファストファッションなんかじゃない
日頃 露天風呂でコズミックサーフィンする者にとって
宇宙こそ特製の巨大な衣裳
アルタモーダ オートクチュール
無限増殖する透明な仕立屋の集団さながら
本質的な永遠の haute couture /オートクチュールである 。。。
さらに
「ブランキの独房」と「プラトンの洞窟」は 通底している
というより
このふたつは重層した同一のものだ
牢獄を洞窟に換え
プラトンが造った洞窟にひとり座し ブランキは炎の影ではなく
無限と永遠の宇宙を幻視 発見した 。。。
いやそうではない
メランコリックに無限誕生を繰り返す多重な超宇宙を創造したのだ
この際
憶えておくがいい「脳漿は銀河よりはるかに巨きい」ことを
永劫とは
「透明すぎるメランコリー」の別名であることも