2002-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『茶の本』岡倉覚三

天心 / 岡倉覚三は 20歳を超えるあたりから 余の輝ける英雄となって今日に至っている。 東京美術學校を独力で作り 奇矯な制服を定め 騎乗して通う。 さらに 官僚的な輩に 自ら創った美術學校を追い出されるも 横山大観、下村観山、菱田春草ら 少数の優れた弟…

雑誌『國華』

明治22年10月に 高橋健三と岡倉覚三/天心によって 創刊された大判の美術雑誌。 2002年6月20日発売の号で 1280號を数える。 発刊の趣旨は 〈国民とともに邦家の精華を発揮せんとする〉 であるから 書籍/雑誌マニアなら この日本最古の雑誌をせめて一度は手に…

ブルーナの切手/Dickのマチエール

街で見かけて、 ブルーナの絵の付いた切手を買った。 99と01年のふみの日に出た奴。 7月23日をふみの日と呼ぶらしい。 何処と云うことなく ニホンの女の子 ニホンの男の子 ニホンのウサギの絵がついている。 少し前NHKの「未来への教室」で ブルーナが子…

栄寶齋/北京・瑠璃廠

清朝初期、康煕帝の時代に始まる 《文房四宝》の名店。 300年を超える歴史を誇り 北京の骨董街 瑠璃廠にあって 明治期からは日本の文人にも 親しまれてきた。 80/90年代には瑠璃廠の大々的な改修工事があり そのときは今も「池袋西武」にある 出店『栄宝斎/…

太史硯

子供の頃から文房具は好きだった。 大人になり 髭に 白いものが交じるようになると 意味なく 文房の道具を手にしたり 眺めるようになった。 机上に小さな硯が置いてある 100mm×60mm 高さ33mm程の大きさしかない。 寂れたようなFleaMarketで 中国人青年から需…

絵筆を擱いたホックニー/David Hockney

デヴィッド・ホックニーは30年を遙かに超えて 常にボクの絵画的ヒーローであり続けた。 今年65歳になる 彼が絵筆を擱いたようだ。 ウォーホルも ジャスパー・ジョーンズも ジム・ダインも クリストも ギルバート&ジョージも サム・フランシスや ロイ・リキ…

衣裳論/ERIC GILL

朗文堂から『評伝 活字とエリック・ギル』が出てフォントデザイナーとしてのギルは認識され慶んでいる。 そこで別の側面。 1952年、創元社から出た『衣裳論』の序文を書いた花森安治はこう述べている。 〈下らぬ衣裳記事は山のようにあるくせに、まともな衣…

Osama bin Laden/911

多くを語る必要のない人物。 単にBIN LADENでGoogle検索すると1440000件もヒットする。 ゲリラ/テロリストと言っても 67年39歳でボリビアに戦死したエルネスト・チェ・ゲバラとは全く違う。 時代相も国際環境も全く異なった。 彼がCIAと蜜月の期間を持ってい…

汐間温泉/八丈島

洞輪沢漁港を見下ろす高台に小さな祠。 聖所に向かう長い石段の途中で 仕事を終えた漁師さんたちが車座になって焼酎を呑んでいる。 「朝から散歩してただろ……一緒に呑もうよ。そこの漁協の購買でサケ売ってるから」 酒の肴はウツボの煮付け。 これが旨いとい…

御嶽/斎場御嶽

《うたき》とは沖縄各地の神聖な場所を表す言葉。 中でも沖縄本島南部・知念村にある 《せーふぁ・うたき》と呼ばれる此処は現役の 聖なる空間だ。 何もないことこそ太古よりつづくこと 此処には神道のような《鏡》すらないのだ。 在るのは巨岩。眼の前の大…

雲の腕環號/PAYA

1998年11月。 アントワーヌ・ド・サンテグジュペリのブレスレットが 漁師によって発見された。 一緒にP-38ライトニング機の破片も見付かったとの 外電が小さく報道された。 それを記念して スペインPAYA社製のブリキ玩具に命名した。 高翼の水上艇。 今も顔…

土門拳のNikon-SP

ボクが16歳くらいの時会った土門拳は ニコンSPのブラックを持っていた。 レンズは多分28mm。 本来は白いNikonのロゴ部分を 赤く何かで染めていた。 ストラップは上野の組紐屋「道明」の それを転用していた。 当人がそう云った。 眼が どうだお洒落だろう そ…

最高のROCK写真家/Noman Seeff

ノーマン・シーフは間違いなく70年代をリードした写真家だった。 それはRockが時代そのものをリードしていたから。 優れたロックアルバムのジャケットには ほとんど例外なく彼の名前がクレジットされていた。 彼に一度だけ会ったことがある。 70年代の終わり…

『十五歳』ポール・ジンデル著

ふと思い出し、遠い目をしながら探してみた。 79年に角川書店から出た小説。 龍田八百・訳 ポケットに洗い熊の仔を入れ高校に通う少年。 父親は彼にこう教える。 「いいか、お前どんなことがあっても 眼ン玉だけは踏まれるんじゃないぞ。」 何だかとても気に…

18・大竹伸朗

写真とデッサンによる大竹伸朗18歳/青春の記録。 北海道野付郡別海町の牧場で過ごした一年間。 28年を経て、この5月に出たばかり。 初々しく荒々しい力に充ち 青春の悶々としか云いようのないものに苦しむ魂と 剥きだしで迫る現実が拮抗した記録。 希有な…

戦艦ビスマルク

旧帝國海軍の艦船に好きなのが見付けられなかった少年は、 同盟国/獨逸海軍に救いを求めた。 戦艦ビスマルク。 悲劇の軍艦と云うところも大いに気に入る/笑。 名前を貸すことになった鉄血宰相は、 寿限無ジュゲム程じゃないけど 大変長い名前をもっているが…

ド級/超ド級

変換すると超弩級だが。 戦艦ドレッドノートはどう考えても「弩」ではない。 大艦巨砲主義の起点となった[HMS Dreadnought] は、1906年に建造された。 全長 160㍍ 排水 18110t. 速度 21knot. 副砲を廃して可能な限りの主砲を装備する。 未だ実験段階にあった…

ユングの家

此処でも彼の学問的業績は関係しない。 ただ彼が家を自分で建てた事実に興味がある。 自ら石を運び ブーフーウーのしっかり者のように 石の家を水辺に建てた。 彼は終世 ヒトは水の近くに棲まなければならない と語って倦まなかった。

フロイトの書斎

此処では彼の業績を云々しない。 ただただフロイト氏の書斎に興味がある。 彼がエジプトを始めとしたアンティークを蒐集していたのは良く知られた事実。 そしてそれらがすべて本物であったのも事実。 私が興味を持つのは彼の飾り方だ。 まるで護って貰うが如…

Rupert Sheldrake Ph.D.《形態形成場理論》

超簡単且つ乱暴に要約すれば、空間が記憶する。或いは想いが質量を持つ。 ここ20年間に現れた理論の中で今でも最も刺激的な論。 世界は変わりつつある。 ボクの考えでも彼の云ってることはほとんど頷ける。 工作舎から 「生命のニューサイエンス」 「世界を…

象牙と磁器の詩・チンチロリン

通称チンチロ。ソノ道のプロは単にドンブリと呼ぶ。数ある日本の賭博、賭け事の中で一番単純。 故に深いものがある。 釣りが鮒にはじまり鮒におわると言われるように。 薄い染め付けの磁器に できれば御法度の象牙製賽子三振り。 良い音させたい。

雲伴居

建築家・白井晟一の最後の作品。 最終的に還る筈の京都・自邸だったが 完成を待たずに1983年11月21日に死去。78歳。 翌84年に落成、未終の棲家となる。 筑摩書房から限定版で写真集が出ている。 東京の自邸は1970年の虚白庵。 書を能くした。 作家・林芙美子…

『一図書館の由来記』栗本和夫・著

小さく美しい書肆として知られる中央公論美術出版から 1980年に出された。 貴石のような本。 此処で語られている図書館は おそらくこの邦で 最も美しいそれである。 不定期に開館され続けている。 要電話予約 長野県諏訪郡富士見町境六三〇七 財団法人 栗本…

軍用・半ズボン

watakushiは一年の大半を半ズボンで過ごす。 二月の終わりには、もう短パン・ショーツ・ショートパンツである。 それから寒くて穿けなくなるまで。 だからそれなりのこだわりがある。 ここ数年はグラミチのパンツを色々穿き回しているが 本当に好きなのは各…

三徳山 三佛寺 投入堂

俺が死んだら此処を俺だとおもってくれ。 それほど強く惹かれる建物。 均衡 簡素 そのもの Less Is More なフォルム 東洋とりわけ日本美の極北 と言える奇数の美 Asymmetryそのもの 静寂そしてmove 岩盤に建つ 盤石 そのもの 岩に羽をやすめる鷲の如き佇まい…

陋屋のダンディスム/稲垣足穂

廃墟も悪くない。ルードヴィッヒ二世を想い出す。 小屋にもノマドにも惹かれます。 でも、陋屋のダンディスム。 見立てで観れば、白州次郎/正子も ある種 陋屋・武相荘。 さてそこで想い出すのがこのひと。 地上とはおもいでならずや。 けだし名言。 稲垣足…

おほてら の まろき はしら の つきかげ を つち に ふみ つつ もの を こそ おもへ

秋艸道人・會津八一は佳き教師であり、優れた学者であり、傑出した詩人・藝術家であった。 このような人は稀である。 「キーワード」を漢字に変換してみよう。 大寺の 圓き柱の 月影を 土に踏みつつ 物をこそ 思え 月影とは「月光」のことだが、ここでは光の…

本の行く末(蔵書について)

もう店を畳むと言う古本屋さんで幾つか本を購った中に、斉白石の畫帖があった。 読んだか読まなかったか判らぬほど綺麗な本。 扉に蔵書印。 丁寧に押されたそれに,どこかで見た記憶がボンヤリ浮かぶ。 磯崎新だったか、それともあの人だったか。 それは大判…

聖三木図書館

美しい名前をもった小さな図書館。 上智大学の中 上智会館2階にあります。 デーケン教授がコレクションを公開、創設された。 学内のみならず一般に向けても開かれている。 和27000冊 洋23000冊 開架式の庫内を彷徨うと古い柳宗悦の雑誌『工藝』のナンバーが…

夜間戦闘機「月光」

神林長平の「戦闘妖精 雪風」にまけないイマジナブルな名称を持つ日本には珍しく美的な航空機。 月光と百式新司偵だけが、世界水準の設計に思えた。 ポスターなど平面デザインは 浮世絵、着物あるいは光琳など、 江戸時代から最高水準にあるが、 この国はい…