衣裳論/ERIC GILL
朗文堂から『評伝 活字とエリック・ギル』が出てフォントデザイナーとしてのギルは認識され慶んでいる。
そこで別の側面。
1952年、創元社から出た『衣裳論』の序文を書いた花森安治はこう述べている。
〈下らぬ衣裳記事は山のようにあるくせに、まともな衣裳評論がほとんどないというのは、なまじ毎日何か着て暮しているだけに、これは大へんふしぎであり、不幸なことでもある。〉
50年経った今も事情は微塵も変わっていない。
譯者・増野正衛氏のGILL紹介が簡潔で優れている。
〈ギル(Arthur Eric Rowton Gill.1882-1940)という芸術家は、日本でももっと知られ親しまれて良いはずの人だと私は思っている。彼は今世紀前半の時代を、生国イギリスを舞台として縦横に活躍した全人的な芸術家だった。彼の名は恐らく彫刻家として後代に記憶されることになるのだろうが、その生涯に展開した活動の幅はすこぶる広く、刻銘、銅蝕版画,絵画、活字作り、印刷、装幀などの諸分野でそれぞれ一人前以上の業績を残している他に、二十冊を出る芸術論や文明批評の著述をも世に送っている。〉
この本は
少年期から敬愛する
柳宗悦が大変重視したギルの書であり
さらに子ども時代から敬愛する花森安治が
序文を書いた
いわば
南方熊楠の云う
【翆点】の如き本。
(少なくともボクにとって)
装幀は流政之。
何処か文庫にしなさい!(笑