「ポール・ヴァレリーが亡くなった一九四五年は、約一世紀にもわたるフランスでのポオ崇拝の終焉を意味している。この崇拝はボオドレールがポオの物語を発見し、それをフランス語に翻訳する作業に専念しようと決意した一八四七年から始まる。フランスでポオを知らしめようとしたボオドレールの願いは、彼に続くマラルメとヴァレリーによってまるで伝道師のような熱意で達成されたのであった。三世代にわたるフランス詩人達が献身を捧げたこのポオに対して、ヴァレリー以後ポオを支持するフランスの偉大な作家は皆無なのである。」
本書の内容は この書きだしの文章に総て要約されている。
ボオドレールとマラルメ ヴァレリーが エドガー・アラン・ポオに捧げた深い敬意の籠もった情熱はいったい何に由来するのかを探求した
アメリカのフランス文学研究者の論考である。
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ヴァレリーはこう述べる。
「こうして、詩の歓びの条件を分析し、悉尽論証(消去法)によって絶対詩を定義したポオは新しい道を切り拓き、ある種の数学とある種の神秘主義が一つに融合する非常に厳格で深く魅惑的な説を教示したのである……」
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マラルメは一八八九年に出版したポオの詩の翻訳にこのような献辞を附けた。
「ボオドレールの死のみが、これらの詩のすべてを翻訳することによって、彼の天才がエドガー・ポウに捧げた壮大で友愛的な記念碑を完成させるのを妨げた。
そのボオドレールの霊に捧ぐ。」
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ヴァレリーはマラルメの詩『エロディヤード』についてこう書いている。
「『エロディヤード』に関して言えば、この詩は私に比類なき美の効果を創り出した。それはかなり外面的な類の技巧の・・高踏派詩人の技巧の・・驚嘆すべき結合であるが、非常に洗練されたものであり、その源泉はエドガー・アラン・ポオの詩編に見出し得る霊性でもある 」
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そう 彼らの間にはある種の【霊的友情】が流れていた。
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この本は‘鋭い感受性のある読者’にとっては極めて知的にスリリングな評伝になるだろう・・・
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