JOSEPH BEUYS / MULTIPLES

没後のボイスを最も際立たせているのは《マルチプル》という“考え方/言葉/思想”だ。

それは通常の版画やブロンズ彫刻のような【複数の作品】が存在するという以上の積極的な意味を持つ。

ヨーゼフ・ボイスにとっては “観念・思念・想念”こそが不可視の作品だ。

「霊的な藝術」という云い方も可能だろう。

シュタイナーを祖父に

 デュシャンを叔父に 

通信兵として搭乗していた急降下爆撃機ユンカース‘JU87’とその墜落を父とするボイスは

 冬のクリミア半島でのタタール人による看護を母として“霊的な藝術家”に再生する。 

彼は人生そのものをマルチプルに生きたし 活きている。

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1985年12月23日 ナポリの《国立カポディモンテ美術館》カムッチーニの間で発表された 最期の作品。

   【Palazzo Regale】“パラッツォ・レガーレ/王の宮殿”

   には二台のヴィトリーネ{硝子ケース}

     が美しく据えられ 

      壁には

    

       七枚の真鍮板が掛けられている。

        ヴィトリーネの中には

         毛皮のコート や シンバルや

          巻き貝 リュックサック など

    

           が納められている。

         

           

     会期中の1986年1月23日に彼は旅立った・・・

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        視 之 不 見。

老子道經第十四 〈贊玄〉より

 

   ボイスには老子と帽子がよく似合う。

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