ハインツ・アルフレート・キッシンガーは
ドイツ生まれの帰化アメリカ人であるため「大統領職」には就けなかったが
外交史上に
多くの凡庸な大統領以上の足跡を残している
驚くべきは
九十三歳のいまなお現役の「大物政治家」として
昨年の十二月に訪中 ドナルド・トランプの代参を果たし
中南海との四〇年余にわたる太い絆を世界に顕示した
彼は
クーリッジからニクソンまで8代にわたって
米国大統領に「君臨した」エドガー・フーヴァーFBI 初代長官に匹敵する
アメリカの怪物である
キッシンジャーの最初の訪中は1971年7月
その間
1971年9月林彪副主席がソ連へ亡命途中 墜落死する 。。。
昨日まで「アメリカ帝国主義はハリコの虎である」だったのが
一転
国家安全保障問題担当大統領補佐官キッシンジャーと機密会談
これらと
軍人中の軍人林彪元帥によるクーデター計画は
無関係ではありえないだろう
ことを忘れてはいけない
この時期は一〇年に及んだ「無産階級文化大革命」の只中でもあり
合衆国空軍による
クメールルージュ/ポルポト派へのカンボジア空爆も始まっている
この本には
きわめて複雑だった
四十数年前を回顧追想しつつ読むと
当時はまだ見えなかったものがウッスラ浮かんでくる
この【増補決定版】では機密解除された部分が訳出された
日本に関する部分は特に重要な内容を含んでいる
合衆国も人民共和国も「まったく日本を信じていない」事実だ
アメリカ合衆国政府こそ
日本の政治家および財閥と軍産複合体を信用していない
ほとんどのニッポン人はその部分を大きく考え違いしている
ほんの一部だけ引用しておこう
ニクソン大統領の発言
《 私は在日米軍を撤退させません。【なぜならば、日本を抑制することが太平洋の平和にとって利益になると私は信じるからです。】
周恩来総理の発言
《 第一にあなたは、平和的開放を望むし妨害もしない。第二に、米軍がいる間に日本軍を台湾に入れさせない。【何があっても避けようとするでしょうが、抑止するには日本に軍隊を置いておくことが必要です。】》
【 】内は 旧版ではサニタイズド/抹消されていたため訳出できなかった部分
より大部な
『周恩来 キッシンジャー機密会談録』を読んだのは2004年だった
この国と国際政治を客観視するためにも
冷静な理性 知性を保ちたいひとはぜひ
この二冊をお読みください
日本の不透明さは新聞テレビのとてつもない堕落腐敗と相まって
ますます酷くなった
あるいは
再選されたニクソンが
ウォーターゲート事件により任期中の辞任など
南京豆と水門は仕組まれた罠ではなかったか
本当はまだまだわからないことだらけだ
この本に登場する人物たちはみな泉下の客となった
不死身のモリアーティ教授のような
怪人キッシンジャー博士だけが現役である 。。
彼らが政治家だとすれば
ぼくの考えでは
私欲により発狂した知的障害者である
『ニクソン訪中機密会談録』増補決定版
毛利和子・毛利與三郎訳 名古屋大学出版会
毛利和子 増田弘 監訳 岩波書店