富本憲吉と岩波茂雄の湯呑。。
けさ荷物がふたつ一緒に届いた
ひとつはずっしりした重さの書籍小包
もう一つはそれよりずっと軽く小さな段ボール
1962年に朝日新聞社から「千貮百部」出され朱筆で
「貮百拾参」番とある限定版のパラフィン紙も折り目ひとつない
完全完璧なデッドストック/ミント状態
しかも昭和37年9月の定価五千五百円が
無競合落札価格910円で税込1001円 送料1060円だ
つまり消費税送料込み2061円でしかない。。
日本の出版文化/印刷/製本技術が最高度に達していた
時代の重厚な美書だ
それが誰も価値を認めず知る人もなく投げ売りされている/笑。
さて さらに重要なのは小さな小包だ
大阪市の古美術商から送られてきたものは
富本憲吉造と桐の共箱蓋に書かれた『染附 湯呑』である
直径75mm 高さ71mmの小体な湯呑横に
「低 處 高 思」と書かれている
この格言はワーズワースの詩の一節
「Plain living and high thinking 」から取られ
細筆で丹念に筆書きされている
これはてっきり敗戦直後の文化勲章受賞記念かと
簡単に考えていたが 岩波茂雄が受賞した1946年は戌年だから
じんご/みずのえうま「壬午」は1942年とすると
多額納税者として貴族院議員になった記念でも文化勲章受賞記念でもない
「壬午 明治節」問題はじっくりと探究することにして
それにしても
どうしても欲しかったので「即決」で落としたけど
これほどの奇貨でも競合者なしには少し驚く/笑。
この湯呑は初めて買った富本憲吉である
吉田五十八に別荘建築を依頼する趣味人としての岩波茂雄はもともと印象的だったが
この湯呑および共箱は昭和期文化の良いスーブニールになった気がする/笑
美意識と高度な趣味を持った出版人としては 岩波茂雄以外にも
出版が教育制度を超えて文化の核だった時代
書籍美が工芸と美意識の精髄/華でもあった社会
それらが善悪と好き嫌いを超え「終了」した時代を私たちは生きている
生涯にわたって書籍愛を生きたぼくには
文化だけでなく人類そのものが終了したように思えてならない。。
要するに
岩波茂雄も富本憲吉もいまの大衆文化には縁がないのだ 。。
一生騙されて騒いでいなさい/笑。