Plain Living and high thinking are no more :
「質素な生活と高遠な思索」は
《 既にない 》。。。
もう二〇〇年もむかし
ワーヅワスはそう哥った
知悉しつつ
興味ある本を読み
美しいものを購う
先週は
私版本『美と模様』昭和十七年
ぐろりあそさえて『工藝の道』昭和三年
『美と模様』は限定二〇〇部
『工藝の道』は一五〇〇部
どちらも署名入り
さて
この二冊の入手難易度を計れるひとは
古本屋を含めて
「いま」そう多くはいない
結論からいうと
『工藝の道』署名本の方が遥かに貴重
柳の私版本・限定本・署名本を蒐め
三〇年余になるが
(多分)はじめて見た
柳私家版はたとえ発行部数は少なくても
かなりの割合で署名されている
『美と模様』もムロン署名入りで架蔵している
柳工藝論の基本書籍ともいえる
『工藝の道』署名本はいつか欲しいと念じていた
特別な一冊だった
おまけに
長谷川如是閑の旧蔵で
扉に「柳宗悦」の署名とともに
左右並ぶような位置に
「如是閑洞」の蔵書印がある
入手した『工藝の道』を詳細にみるうち
興味ぶかいことを発見
これまで所有していたものと
背の題箋サイズが異なっている
と言っても
印刷部分は同一で用紙サイズに違いがあるだけ
さらに面白いことは扉ページに挟んであった紙片が
やや大きな方の未使用「題箋用紙」であること
まさか
題箋のサイズを選べたとは思えないが
さすがに
製本が完全に手仕事で行われていた時代の本だ
ながいあいだの探求書だった
『工藝の道』署名本を落掌した
このあとは
不思議なほど市場に出ない
『蒐集物語』署名本に留意することになる
まるで兄弟のように
宝文館から昭和三十三年に出版された『民藝四十年』は
献呈署名入りが珍しくないのに
中央公論社から昭和三十一年に出版された
『蒐集物語』の署名本は
どのような事情からか
本当にほんとうにない
ちなみに
ぼくの『民藝四十年』は松方三郎への献呈本で
墨痕淋漓 大きな文字で
「松方三郎兄
宗悦」と署名されている
「兄」ついでに付記すると
私蔵する『蒐集に就て』には 「梅原兄
宗悦」と書かれている
もちろんあの梅原龍三郎宛だ