春のひかりと 。。 志村ふくみ の色 Michel Couvreur のいろ

なぜか「縁あって」

 そう 言挙げするほかない 玄妙かつしぜんな経緯から

つかうあてなど ないまま

     志村ふくみさんの帯締めが 

陋屋に届き

  光を浴びて ナカシマのおおきなテーブルに載っている

      しかも 

  二本 それぞれ桐箱に入って

蓋裏には 志村さんの署名と 色の名

  『蘇芳 志村ふくみ』 

  『淺みどり 志村ふくみ 深見まさ』

      ( 深見まさ氏は 志村さんとの協働も多い組紐作家 )

春の自然光のもとで眺めみる

         ゲーテ シュタイナー研究家でもある 稀代の染織家の色は 

         大袈裟でなく 光っていた

    

         いのちの微粒子を内包したかのように輝く

         発光する絹糸

         凝固した ひかり あるいは 定着された なにか

  かつて

      《「色は 光より 速い」》

  摩訶奇怪不可思議で幽玄かつ深遠なアフォリズムを嘯き呟いた 二〇代のおわり

     あれから何十年かの歳月を経て

        さらに 深まった彩色と時空への念慮

    《 光こそ「虚無」そのもの 》 

    《 色は凝固した「時間」である 》 

 それを証明するかのように 

 

         ミシェル・クーヴレーのモルトウイスキー

       七種類 濃淡のことなった階調を奏でながら

     イングリッシュ ウォールナットの机に載って これまた春の自然光を浴びている 

   カスク/樽内での時間によって染められ

 瓶へと移された不思議な色水 

    熟成の魔術師と呼ばれる

 彼の造るモルトウイスキー

   ハイランドパーク蒸留所で 伝統的なフロアモルティングを施し

     スコットランドで最も小さな蒸留施設 エドラダワー蒸留所で蒸留

       シェリー樽で三年を過ごさせた後 

         本拠地のブルゴーニュの地下カーヴに移して さらに熟成させてきた

フランスから出荷されるものの 

  まさしくスコッチウイスキーだから 製品名は英語が用いられている

     また

クーヴレーウイスキーには 

それぞれ 詩的で独特な名称が付けられ 想像力をかき立てる

  たとえば

 Blossoming Auld Sherried Single Malt Whisky

 Pale Single-Single

 Very Sherried Single Malt Whisky

 Couvreur's Clearach 

 Candid Malt Whisky,

  「ペールシングルシングル」を ひとつの典型として

     彼の造るシングルモルト

       どこか 

          透明な詩のような 色と光を 感じさせる 。。。。 

 これも また 

     春のもたらす 淡くて靭い《 生命の虚無と蕩尽 》の作用だろう か

ミシェル・クーヴレーは昨年の夏 亡くなった

ベルギー人で天才的ウィスキー生産者 製造家 

☆「日本の伝統色 和色大辞典」