『売夢』『売買夢』による 隷属 襲来する 「巨」大「悪」夢 たる 環太平洋戦略的経済連携協定 。。

ここ三週間ほど 

横張 誠さんの『ボードレール語録』

鈴村 和成さんの『書簡で読む アフリカのランボー』を

  読んでいる

読みおえた本は 香川 檀さんの『想起のかたち:記憶アートの歴史意識』。

読み続けている 他の本は

黒沢 文貴さん『大戦間期の宮中と政治家』

パトリック・J・ブキャナン『不必要だった二つの大戦 / チャーチルヒトラー』がある

そして 遅遅としてすすまない ものの 

ゆっくりじっくり 匍匐前進のように継続しているのが

W・ジェイムズの『宗教的経験の諸相』上下

中村 元『東洋人の思惟方法』上下

これらが 

素晴らしいプレゼンス 磁力をもって 燦然と ある

ご覧のように ここには 

たった一冊の小説もない

  ぼくは 

もう小説は読まない ドラマも 映画も見ない 

テレビも見なければ 新聞も手にしない

小説をほとんど読まなくなったのは 三〇歳を超えたころだったが

そのころ高橋悠治の『水牛楽団のできるまで』に

こんな言葉をみつけている

《 悪漢小説は、処世術の本でもあった。初期の教養小説には、生の目標があった。

 いまの小説はカビだ。いたるところに繁殖し、手のふれたものをくさらす。えがかれた思想は

 うそになり、えがかれた人間は性格のなかにおしこまれ、できごとは過去になる。

  希望のない社会が、小説という形式をえらぶ。小説が、詩も演劇も映画も汚染する。》

これは一九八〇年の日記をもとにした本だから

悠治さんは四二歳だった 。。。

         ☆ ☆ ☆

  三〇年前より さらに はるかに希望のない社会

  そこに ぼくらは生きている

小説に限らず 

安価な合成ドラッグにも似た「夢」のようなもの 

それが大量生産され ひたすら消費されるための商品として 売買される時代

『売夢』 『売買夢』 悪夢を含め 夢を買うのが当たり前になったとき

  想像力は 想像力そのものが 人間を疎んじて蒸発をはじめる 

    揮発し 失踪する 考え 夢見るちから 生命そのもの

そんな 怖ろしい社会 

    怖ろしい生き方が 始まっている 

    変化はまず 外側から はじまった

敗戦後 この国では お母さんが 洋裁をして

子どもたちのパジャマやシャツ パンツを縫い 

帽子や セーター カーディガン 手袋 マフラーを 編み

子どもは 工業生産された 商品が発散する 色香に誘惑されながら

 母の 手のちからに つつまれて 

 

    家庭でつくられる 衣服を 衣裳を 身につけていた

          やがて

食べ物も 外で食べたり 

食材ではなく  調理済み食品を 工場の料理を 買ってくる

 それを 便利 調法 合理的 モダーン 経済的だと信じて

 歓迎し

     いわば 買い食いを

 だれも疑問に 思わないような社会になった

 いまでは 

日々の夢まで 

コミック雑誌から ドラマ 映画 ゲーム DVD

なんでも買うのが当たり前に なった。

想像力を喪った 人間は 人間といえるのか

  想像に必要な部品と 全体の構造 設計図まで お仕着せの ものを 購入する 

  隷属そのものの 暮し と 日常

TPP を  簡単に紹介しよう

 環太平洋戦略的経済連携協定 の見えざる中心にいるのは

利己的な自由貿易をもとめる 輸出産業体 産業経済団体 のほか

たとえば

巨大製薬産業群 国際種苗 農業企業 超巨大高利闇金融業者や 薄きたない鵺産業 広告代理店 

とならぶ

ウォルト・ディズニー・カンパニーだ

The Walt Disney Company は二〇一一年段階で 資本金 三百億ドル超

日本円にして 資本三兆円を超える「売夢」「売買夢」専門の巨大企業だ

  著作権の 無期限延長 

死んだウォルトが 昔むかし 紙やセルに描いた 世界一有名なネズミが いつまでも 大金を咥えてくる

 大金のデドコロは 子ども と アタマの足りないオトナ あまりお金のないひとびと 

世界中に いっぱいいる 

世界人口の 99パーセントを占める 貧しいひとびと

売春や ドラッグ・シンジケートでも これほど 巨大なものは かつてなかった

  簡単に言いましょう

環太平洋戦略的経済連携協定 の目指すもの

それは 著作権や 特許権 ブランドの登録商標権が

 基本的人権より 優先する 

 冷酷無惨な 法人格の私権が 血肉を有す 人間の生命線 天から賦与された基本的人権

 追い払い駆逐し 優越君臨 跋扈暴走する 

 いわば 狂気の世界だ

国家を超えた 上部構造 頂上機構として 

  グローバル企業が 君臨する 

  まさに 理想の悪夢社会

  それが まもなく 完成する 

    《 弔砲 と 跋文にかえて 》

ボードレール語録』から 引用しよう

 《 世界はやがて終わりだ。世界がまだ存続するかもしれない唯一の論拠は、現にそれが存

  在していることだ。逆のことを告げるあらゆる根拠と比較するなら、特に、世界がこれか

  らさき天の下で何をすることがあるのか、という理屈と比較するなら、この論拠はなんと 

  薄弱なことだろう。一一というのも、仮に世界が物質的に存在し続けるとしても、それは、

  存在という名に値し、歴史事典に載るに値するような存在の仕方になるかどうか疑問だ

  からだ。、、、、》        横張 誠  訳