願わくば 80歳になったロバート・フランクの魂に 安らぎを。
フランクが撮った「Mary and Pablo NYC,1951」
という有名な 妻が生まれたばかりの息子に授乳している写真がある。
家族写真として不思議なほどに幸福感のない写真である。
授乳しているのではなく 授乳の場面を撮るために胸を出させているのかもしれない。
何故なら乳児であるパブロは 眠っているから。
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パブロは やがて …‥・青年になってから発狂するだろう。
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それにしても 何故
カート・ヴォネガットの息子 マークも一時期 精神を病んだ。
南方熊楠の子息も発狂し船から海に飛び込んで死んだ。
吉野秀雄の長男も発狂した。
巨きな父親を持ったが故に精神に異常を来した様々な例を僕は 想う
〔強い狂気は寧ろ父親達のなかに存った‥‥ 〕
心は不思議だ。
人生はそれ以上に不可思議だ。
彼の云う如く 《人生は踊りつづける》のだ。
人生という名のボールルームの壁紙は‘狂気’で織られているに違いない。
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ときどき僕は想い出すだろう。
銀座のイエナ書店で邑元社版の『THE LINES OF MY HAND 』を見掛けた日の事を
そして いつまでもぐずぐずと
瘡蓋を掻くように 思い起こすだろう。
何故あの時 あの本を 買わなかったのかと
懐かしくて 悦びに近くなった心の痒みと共に
30年も前の軋む階段をあがって
懐かしい 匂いと陰に包まれるのだ。
手許にない写真集こそ
記憶の中の本と写真こそ
色褪せない
最高の写真集である。
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繰り返し眼にしていたアヴェドンの写真「ジューン・リーフ(画家)ノヴァ・スコシア 1975年 7月」
の女性が
フランクの再婚した相手だった事に今日初めて気が付いた。
ノヴァ・スコシアで気が付くべきだった・・・
しかし 人生の日々はこれだから面白い 発見は悦びだ(笑。
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↓アヴェドン撮影のフランク 他の写真家の肖像も大変に興味深いものがあります。