二巻あわせて千四百頁を超える C.G.ユングの大著『ヴィジョン・セミナー』が
間もなく終わりそうなので
その寂しさを埋めるものとして
ウィリアム・ジェイムズの『宗教的経験の諸相』を 読み始めた
奥付にはまだ一〇代だった日付が第一刷発行の文字とともにある
といっても 購ったのは 昨年の夏だから 刊行から 四〇年余が経っていた
少年も老いたし グラシン紙が健在とはいえ 文庫本も古寂びている
雙方が出逢うのに ちょうど良い年格好になったようだ
だって
『宗教的経験の諸相』を読んでるコドモ なんて気持ちわるいじゃないか、、、/ 笑。
だから ここしばらく ジェイムズとユングを併読していた
が 神秘道的に
ある種の感覚を持つひとびとにとって とても重要な意味をもつ
きわめて興味ぶかい記述が『ヴィジョン・セミナー 2』にあった
歴史的な資料として 備忘録化します
☆ ☆ ☆
《 アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームズの幽霊の身元を
同定しようとした有名なケースをご存知でしょう。私は彼と面
識がありました。とても優れた人、すばらしい人でした。物理
学者で後にアメリカ心霊研究協会の事務局長になったヒスロッ
プ教授は、彼の友人でした。教授は数多くの実験をし、非常に
優れた本を、おそらくこの問題に関する最も知的な本を残しま
した。ジェームズが亡くなる前、彼らは、先に亡くなったほう
が相手にメッセージを送るために最善を尽くすという約束をし
ました。身元をはっきりさせるのに役立つようなメッセージで
す。それが彼らの共通の疑問でしたから。彼の死後、はじめの
うちは何も起きませんでした。しかし、しばらくして——正確
とりが、ウィリアム・ジェームズと名乗る男がヒスロップ教授
にメッセージを伝えたがっている、と言いました。彼は教授に
ピンクのパジャマのことを思い出させようとします。ウィリア
ム・ジェームズという名前を聞いて、もちろんヒスロップは耳
をそばだてましたが、ピンクのパジャマにはまったく当惑して
しまいました。しかしとうとう、彼らがパリでともに学生で
あった頃、ある常ならぬ機会にウィリアム・ジェームズが実際
にピンクのパジャマを着たことがあったのを思いだしたのです。
それから一〇日ほど後、ヒスロップはイギリスの心霊家のサー
クルから手紙を受け取りました。そこには、その夜これこれの
時刻に何十分にもわたって幽霊が現われ、彼らの霊媒に、
セージを託した、と書いてありました。ウィリアム・ジェーム
ズが彼にピンクのパジャマのことを思い出せと言っている、と
いうのです。つまり、ヒスロップとは面識のないサークルが、
同じ晩に同じメッセージを受け取っていたのです。これが彼の
得た最良の証拠です。彼自身が私にこの話をしてくれました
——身元の同定についての非常に興味深い事例です。 》
[ 一九三三年一一月二二日 第Ⅶ講 ]より
☆ C.G. ユングと ウィリアム・ジェームズ そしてジェームズ・ヒスロップ
ユングが直接ヒスロップから聞いた「W. ジェイムズからのメッセージ」
この話の信頼 / 信憑性を疑うとすれば 心理学および芸術 / 宗教には
信ずるに価する人物や正当性はないと断定するに等しい「無知」 を
自ら認めるような 暗く魯鈍な勇気がいる あるいは
知的に優れ かつ正直である という誇大な驕り / Ego inflation をも!!