首都の勘定書
下宿の手すりで紫にすきとおり
咽喉まで昇って詩句は砕ける
そんな風にひとりの韃靼人は死ぬ
うすべにの歯磨粉を吹きちらして
寝巻はにがい薬草を咲かせ
青い木綿のきれをつけた村がみえる
だが稲妻がつめたい岩を串刺すまで
水差しの魂はそこに戻らぬ
幸福はむしろ藁の上にある
大通りで二月の蝸牛を知っている者はない
句読点をなくした平均値以下の左派が
ひっそり尾行されている亜細亜のながめ
おあいにく 日々の鼻血をなすりつけた
奇妙に円い手鏡に菌糸のような鉛筆がき
反乱だ 漬物石は象牙に変る
あなぐらは美しい音にみち……
つぶれた安煙草のかたちに横たわる彼
綴のちがう外国語を掃いてしまえば
ゆうぐれは薄皮の六法全書となり
消えさった性、信仰、階級に醤油をそそぐ
区役所はしぶしぶ片目をあけた
すると荷作りを心得た友達がさけぶ
おお復讐の朝よ のこぎりを
たんぽぽの葉じゃだめだってば
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