不吉でうっすらした悪意/冷笑を感じさせる
題名や作品の多いデュシャンの中でも
形而上学的に最も〈不吉な〉それは
芸術を放棄したとして
存在すら公表されず
死後になって公開された
《1.水の落下、2.照明用ガス、が与えられたとせよ》
通称『遺作』だ。
フィラデルフィア美術館にある
この作品を
人は
廃墟を想わせる扉から
覗き見る。
白昼の叢のような明るさの中
大きく脚を拡げた裸体が‥・・
窃視者の視線を奪う光る女の裸身。
視る、或いは観る、看るとは何なのか。
みられているのは誰なのか。
今私たちは【爆心地】を
コンピュータとカメラを通して
時空を超えて透かし視る。
電子的に覗き見る。
まるでMarcel Duchamp 的に・‥…
21世紀の【遺作】を!
哀しみすら喪われた世界に私たちは生きる。