「吹けよ 嵐 呼べよ 戦慄 。」      『出版』業界の大倒壊 その不可避な理由 。。。

ピンクフロイドをリアルタイム/生音で聴いたのは一九七一年の夏

 『原子心母』から始まった 小雨模様の箱根アフロディーテ  八月六日 

    『ユージン、斧に気をつけろ』が二曲目だった (そう記録にはある)

       ぼくは 頸からNikon-Fを提げ ステージの上

ロジャー・ウォーターズ リチャード・ライト ニック・メイスン デヴィッド・ギルモア 

      すべて二〇代からなる何歳か年上の四人組を 真横から見ていた

               二一歳だった

     七月には後楽園球場で豪雨と雷鳴のなか 遠くからG.F.R.を眺めたが

          格が違う 

     当時 世界最高の前衛を 間近に観察できたことはひとつの恩寵だった

   その旅装のまま 八月八 九日の精進湖ロックーンにも参戦

       ただただ若かった 世界も ぼくらも 

          あれから四十四年 。。。

     世界は 見る影もなく 老いて 錆びついている

        いま この世界では 生まれたての赤ん坊までも 老いている 

   同じ意味 世界がすでに終わっていることを

      最晩年の ミヒャエル・エンデも イヴァン・イリイチも カート・ヴォネガットも レヴィ・ストロースも認めている

         マネーのためには放射性物質/放射能も平気でばらまく悪魔の手先 ゾンビども

           世界はグローバル重商巨大詐欺資本主義 による

    超国家的重商主義=TPP および TTIP /Transatlantic Trade and Investment Partnership

                 ブランド的投機博奕経済によって 醜悪なほど若作りしているが 本当は 老人だ 

              

                    死を目前にした 狂った老人老婆 ゾンビで悪魔だ

          子どもの頃から椅子取り競争をやらせれ 硬く脆く洗脳されきったアタマ

              受験家畜の頭脳では 理解するのはやや難しいかもしれないが  そういうことだ

                   さて 国内の事情

     無条件降伏した一九四五年から 占領が解除され 一応独立の形を取った一九五二年まで足かけ八年間で

          オキュパイド・チルドレン 「占領下の子どもたち」

               千八百万人が生まれている

  

      「巨大消費者」群としての彼らこそ 戦後経済復興のダイナモとも呼ぶべき原動力だった

   教科書参考書と月刊週刊マンガ誌に始まる出版産業は 彼らととも成長隆盛した

 『少年』『冒険王』『ぼくら』『少年画報』『少年サンデー』『少年マガジン』『平凡パンチ』『プレイボーイ』『アンアン』『ノンノ』。。。

   『服装』『装苑』『メンズクラブ』『男子専科』『ハイファッション』『モーターマガジン』『カーマガジン』『CARグラフィック』

      自動車雑誌 ファッション誌 クルマの普及 ファッションの日常化 洒落た文房具 家電 あらゆるホビー 、、、

         化粧品 ウィスキー リカー ワイン 自転車からスポーツカー ファミリーカー

 

                いまや巨大な産業となった スポーツと芸能 ショービジネス

    ほとんどといっていい産業が 巨大マーケットとしての「占領下の子どもたち」と親の経済成長とともに 大きくなった 

       敗戦後「奇跡の経済成長」と呼ばれる「発展」を支えたのは 

          ニッポン人の自惚れ鏡では「高い技術力と勤勉さ」ということになっている が

      本当は ちがう

           千八百万人の子どもたちと(戦争と敗戦のつらさを忘れる意味もあり懸命に育てた)その親たち

                  国別の第二次大戦後人口構成を

   客観的にみれば すぐ分かることだが これほどの巨大マーケットは ドイツ イタリアにも フランス イギリスにも出現しなかった

 

       日本政府は 一ドル三六〇円の固定為替と高い関税率で 国内産業/企業を徹底的に保護し

                重要かつ主要な天下り先として 育てた

          結果 オートバイ 自動車メーカーも 化粧品 アルコールメーカーも 食品 繊維産業も

              多くの国内産業が大企業化し あるいはその系列になり 花形の輸出産業として 今に至る

         ところが 

     出版産業は例外的なもの(マンガやアジア向けファッション誌)以外「輸出」に向かない

         つまり

     戦後の半世紀 作れば売れる出せば儲かる出版産業は 殿様商売を続け 

           一見すると知的だが 実はとても遅れた産業だった

      出版社の最大特徴は工場を持たず 自前の流通・販売システムもない点にある

         極端にいえば 電話帳と机さえあれば出版はできる 今ならスタバでスマホでも可能な商売が 出版だ

               (著者 紙屋 印刷工場 製本屋 etc. との信用さえあれば)

            だからもちろん コストダウンのための工場の海外移転など あり得ない

              逆に DTP の急速な普及が コストを下げたため 

          さしたる努力をしないままこの二〇年を 過ごしてしまった

 

                    ところが

       事実上 アメリカによる占領は続いたまま 「オキュパイドチルドレン」は引退の時節を迎えた

         金城湯池の入れ食いマーケット「千八百万人+」が 揃って定年期を迎え 本を買わなくなった 

               知的虚栄心から背伸びして硬い本を買うこともなくなっている

            経済的に買えなくなる あるいは 能力的にも読めなくなっている

               

      六〇歳 七〇歳を過ぎても 本を読み続ける「読書人」は全体の二割もいない

               そして ハードコアな読書家は図書館を存分に利用している

            もう数年も前から「出版危機」は叫ばれてきたが

         なぜかこの大きく歪んだ人口構成に触れる意見を目にしたことがない 

     出版危機の最大の原因 理由は「巨大マーケットの喪失」 それに尽きる

        もう二〇年 三〇年も前から解りきっていた筈のことなのに 。。。。

           取り次ぎナンバー3 の栗田出版販売の倒産は 小さな出版社に打撃を与え

               連鎖倒産を生むだろう

             あるいは アマゾン問題 栗田/大阪屋を統合する可能性のある楽天

        さらにコンビニエンスストアが手間ばかり掛かり 儲けの少ない雑誌取り扱いをやめたら 

                 出版業界に 震度6以上の激震が走るだろう

          その激震の呼び水となるのは 運転手不足に悩む 宅配業界の値上げだ 

     配達コストが上がったら コンビニは雑誌関連の儲けが一日に二千円にしかならない 雑誌販売をやめるだろう

            小田光雄氏の「出版状況クロニクル79(2014年11月1日~11月30日)」によれば

     《 それをはっきり告げているのは「1店舗当出版物売上高」で、セブン‐イレブンが480万円で、

       前年比60万円減、セイコーマートは260万円で、同30万円減である。

       つまり最も売っているセブン‐イレブンにしても月商40万円、24時間営業の日商は1万3000円でしかない。

       現実的にコンビニの雑誌売場の縮小も見られるし、

       これでは取次の流通コストすらも吸収できない販売状況に追いやられつつあるように思える。》

   

             わたしたちの社会は 砂上ならぬ 薄氷の上で 

                    溶け崩れている

            

            気が付いていないのは  あなただけかも知れない

               今回 云いたいのは そのことに尽きる

                        ☆

 

  ※  二〇一三年一月 二年半前の日記を参考にリンクします

    『またまた「デクロワッサンス」論  本と出版 流通を通して 極私的に考える。