優れた本を読んで その「深い海」に沈潜没入していくのは大きな喜びだが
美しい本に溺れるのはもっと愉しい
だから毎日まいにち来る日もくる日も
まだ見ぬ美しい本のことを考えている
本を読むより 買う方が愉しいのは
楽で簡単だからだ
どんなに愉快で気楽であっても
それでは病気になるだろうし
ややもすれば狂気だ
からだからだから 本が 書籍が 綺麗な書物が欲しくなったら
足の踏み場も珈琲カップを置く場所さえない(比喩に非ず/苦笑)
本に占領されたかつての仕事部屋にいってみる
豊穣な廃墟 智と美の集積場 高貴な塵芥
想念と芸術の事故現場
棚にたどり着くために本の山をすこし動かす
それだけで瞬く間に汗がTシャツを濡らす
うっすらと埃を被ったその山の下の方から
すっかり忘れていた貴重な画集や稀覯書が顕れる
あんなに大事だと想っていた本に
汗が滴りおちそうになる
・
買うことだけに情熱を燃やしていると
大切なことを忘れてしまう
「大切なことは目に見えない」と
操縦士は言ったが
目に見えることで 大切なことも多い
無性に無闇に無意味に
本を買いたくなったら
山を見よう
天然の山岳
気持ちの山場
室内にできた本の山々
それも自然/ジネンといえばそれまでだが、、、/笑。
(島内祐子『兼好/露もわが身も置きどころなし』&
佐藤正英『歎異抄論釈』を読みつつ)