南洋備長/歩く学問/鶴見良行

マングローブの木を堅炭として焼く、すると南洋備長炭。」

この一語にも世界がリンケージして

いることが顕れている。

私たちの暮らしの根幹は 

何処にあるのか。

この夏、完結近い『鶴見良行著作集』を

継続的に読んでいた。

中でも

遅れ馳せに読んだ『ココス島奇譚』は

とても刺激的な本だった。

反国家と国境を越える人たちを考え続けた

緩やかで特異/普遍な思想家の

たどり着いた

ヒト族の多様性への

「感懐」 

が随所に見られた。

あれは70年代の終わりだったか

ある酒場で

偶々一緒になった

良行さんは

誰かと

中江丑吉のことを

話していた。

まだ50代の半ばで

丑吉への敬意が

端にも届く

そんな話し方だった。

著作集にも

“若い人に伝えたい”

そんな思いが淡々と漲っている。

彼のおかげで

いい夏だった。