《北京秋天》その他。梅原龍三郎

まさか。

梅原龍三郎の本を一冊も持っていないとは

探してみるまで気が付かなかった。

では僕の 画伯に対する知識は何処から来たのか。

美術館や 図書館や 画廊や 雑誌その他 によって

自ずと醸成されたものらしい。

それほどに 

梅原龍三郎という画家は 自然であり「有名」だった。

小説家で言えば 三島由紀夫川端康成ではなく

きっと 夏目漱石 だろう。

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再度 探してみたら『私の梅原龍三郎』という

高峯秀子の著書が見付かった。87年潮出版社刊。

亀倉雄策 装幀の感じの佳い本。

もう一冊 多聞堂 岡村辰雄の『額装の話』も

探した。これには梅原が短い文章を寄せている筈。

       ・

ところで今 思い出したけど

僕の書架には 漱石の本がない。 

多分 一冊もない筈。

これまでに夏目金之助漱石という人の著書を

全く買った覚えがないから。

「国民的作家」の本なんて 

僕が読まなくても誰かが読む。

そう思っていたし 

此からも屹度そうだ。

処で

小説と 絵畫とは 話が違う。

梅原龍三郎の絵は 良い、ホントに好い。

薔薇や 人物像もいいが 特に良いのは

風景だろう。

浅間山 桜島 種子島 熱海 カンヌ ヴェニス etc,・・・

だが 一枚だけ 撰ぶとすれば 

    あの《北京秋天》!

竹橋の国立近代美術館が所蔵する多くの梅原作品中

際だっている一枚。 

     輝くように透みきった大気と 

質量を持って恩寵のように天空から垂れさがる光

        浮かぶ 雲

更に 眼には視得ない筈の事まで

描かれた 絵画作品の傑作

       ・

    《北京秋天

       ・

たとえ 絵を眼前にしなくとも 想うだけで

    心が 晴れ晴れとしてくる。

       ・

今日 北京秋天 を想う。

やがて来る 冬も 想う。

春夏秋冬 すべてに 想う。

     晴れた

 抜けきった 澄んだ秋の空は

    心の状態 だから・・・・・。

       ・