刺青。入墨 あるいは彫り物、墨、文身、刺文、黥。
変わった言い方では我慢なんて呼ぶ人もいる。
本格全身の手彫りになると数年の痛みと出費への
我慢が必要になるからだ。
それこそが痩せ我慢 男伊達の見せ所。
昇り龍やら観世音菩薩 唐獅子牡丹に花と蝶
凡そ力強く有り難く華があって他人を威圧できる物なら
何でもモチーフになった。
そういえば僕は昔 九州は別府温泉で
代紋を背負った人を見たことがある。
しかも現代の絵師たる彫り師の「先生」を
連れてその人達は旅行中だった。
稲穂の代紋を背中に彫り込んだ六本木の三代目は
短い間だったが裸で話していて何となく馬が合う気がした。
こんな社会で良いんだろうか
二人で世を嘆いていたっけ
傘下の九州の組長以下、ボディガードなど
総勢30人ほどもいたような‥‥
あのころの僕は無鉄砲というのか‥‥
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はなしは山懐に抱かれた小さな温泉に戻る。
老いて縮んで痩せて何の彫り物かと思うような人がいる
想像力を働かせてみると
それは決して鼠なんかじゃなく
若い頃は狛犬か唐獅子だったんだろうな
そういう半端な遊びを つい若い時にしてしまう人が
何時の時代もいる。
その頃にはやがて老いる日が来るなんて
想像できゃしないのかもしれない。
或いはそれよりもう少し本格でも
脳梗塞や何かで体が不自由になって
這うように来る鄙びた温泉
突っ張った厨房にさえ小馬鹿にされるだろう
意気がりが腕や背中で啼いている。
世は無常であり無情でぁる。
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斯様左様まことに温泉という場所は深いのだ。
そして人間という存在の業も真に深い。
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人生は我慢だ文身だ悶々だ!(笑)