反•巧言的:諫言として  「無産階級と大学院」

    敗戦後

  とりわけ ここ四〇年間

この国の混乱と無力化の基底部には

   「学歴問題」と「ステルスな階層階級」が潜んでいる

 もともと無産階級だった大多数の民草・庶民・大衆・蒼氓

     凡夫匹夫・熊八・善男善女

        呼び方はどうあろうとも

          彼ら我らに降ってわいた

            擬似平等としての新製品

          ポツダム民主主義

       (実態は儒教ムラ社会擬制民主主義立憲君主政/改)

                          無条件降伏から

       (敗戦を直視・反省・批判・総括するいとまもなく〕

     主権在民 自由平等が無料で喧伝される / 笑。

  その中で

 とくに勤勉かつ素朴で純情 強欲なひとびとが

  「無理をして」まるで保険商品のように

    「高学歴」を得ようとした

      それぞれ努力しつつ経済的にも「背伸びした」ために 

       階級脱出ないし階級変更ができたと

         単純素朴に

          思い込んでしまった

            多少は階層セルフ意識に変化はあったものの

              当然ながら

               本質としての階級変更はなかった

            また

         高度経済成長期と呼ばれた時代

    一億総成り上り気分を糊塗して 欺瞞的に一億総中流と呼んだ

        テレビと新聞 メディアを異常に信じるニッポン人は

           それを間に受け 本気にした    

            「苦学百景」

          その幻想・幻覚・幻影としての

   階層級成り上りが脳裡・背景にあるから

     新聞の社畜ジャーナリスト

      NHKを含む政府・広告屋としてのテレビ局員

        二世代前は小作水呑百姓だった官僚

         親を小商人に持つ大学教師

             彼らは

         自己実現という名のイス取り競争

          私利私欲を最優先で追求する

           品性下劣を恥じないし

            上昇志向も露わに

              権力に媚び

             阿諛追従し忖度する

 

     富士と桜には媚びへつらいがよく似合う 。。        

       大学院とタワーマンションはよく似ているし

         高学歴には高山病がよく似合う

             現在

    全国に少なくとも二〇万人はいる大学非常勤講師/兼務教員たち 

       少なからぬ割合で博士号を持つ

         彼らこそ

     現代の典型的なルンペンプロレタリアートである

       不思議なことに

          いや意図的に

      ルンプロはもちろんプロレタリアートも死語化されている

         大学非常勤講師はまったきルンプロであり

       全国で二〇〇〇万人を超えた非正規労働者はもちろん

     生粋の非正規無産階級・ルンプロそのものである

   ところが 高学歴を得た人々を中心に

     かれらは自分が無産階級だとも 

        ましてやルンプロだとも思っていない

         理由は 自認するのが「嫌だ」からだ    

            確かに

               LGBTのように

            階級自認を拒否する

     トランスジェンダーならぬ「トランスクラス」も理論的には可能だ

            ところで 

   タワーマンションをローンで購入しているひとたちは

        客観的には

     借金を抱えている分 単なる無産階級以下なんだけど

        わかっているのかしら 。。。

 

     さて

  渡辺拓也飯場へ:暮らしと仕事を記録する』洛北出版

   釜ヶ崎 西成公園などに付随した

      寄せ場飯場のフィールドワーク

   実際に数次にわたって長期間 飯場に住み 現場に行く実践的労作

  博士論文『飯場社会学ーー下層労働者の排除の構造とメカニズム』を

   下敷きにした一般書籍だが      

      かなり興味ぶかく読んだ 

         渡辺氏は現在37歳 

 

     一般紙誌の総花書評では絶対に書けないだろうことを書きます

 

    渡辺氏は

  いとも簡単・単純に研究者たる自分と「下層労働者」とを分けているが

  松原岩五郎『最暗黒の東京』や横山源之助『日本の下層社会』の時代では

  あるまいし 現代の寄せ場労働者と博士号を持つ無給研究員とのあいだに

  それほど本質的な違いがあるのだろうか 

  それは寄せ場飯場労働者の待遇や地位が向上したという意味ではなく

  博士号を含む学歴の価値と大学・大学院の地位が暴落したという事実

  現在の大学院はポスドクたちの むしろ「寄せ場」と呼ぶべき場所では

  ないのか 

  まだ学歴を誇ったり利用する人も多数いるためロンダリングの装置として

  あるいは高額な幼稚園・託児所として大学院は機能している

  ここ二〇年ほど 

  学歴ロンダリングの目覚ましい例では各種専門学校から公立系地方大学

  へ三年次編入する  その後 旧国立一期クラスの大学院に入学(簡単) 

  修士取得後 東大や京大など旧帝大系トップの博士課程に進む 

  資金さえ潤沢にあれば専門学校生徒が東大博士号取得も夢ではない時代

  大学も大学院もサービス産業ですから能力と関係なく買い物のように簡便

  問題は自由になる時間があるかどうかと入学金・授業料の工面だけ

  研究者と飯場労働者の差異はなくもはや無産階級 ルンプロとして同格で

  ちがいは家族など「バックアップ」体制の有無だけのように思われる

  さらに傷口に塩を

  法科大学院を卒業して司法試験に通らなかった者の総数は

  これまでの累計で3万人では収まらないはず

  医師の国家試験でも毎年約一割が不合格になっている

  医学部入学者数はここ四〇年間八千人から九千人で推移しているから

  年間九百人ちかくが医師になれない計算になる

  歯科医師試験はもっと厳しくここ数年30%以上が落ちるという

  薬剤師も六年制になってからの国試合格率は72%しかない

  「末は博士か廃人か」と云われるようになってすでに久しいが

  高等教育機関はいまや確実に高学歴プアー製造装置になっている

  夢見る無産階級 夢見るプロレタリアートたちの 夢の終焉

        

  いまの日本はむごいほど辛辣・冷酷に観察しないと

  この国の近未来を含んだ本当の姿は見えないだろう 。。

   

   『飯場へ』と同時期

  川村伸秀斎藤昌三:書痴の肖像』晶文社

  紀田順一郎『蔵書一代:なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』松籟社

    読み終え

  斎藤昌三や紀田氏たちを旧態依然たる蔵書家としてやや遠ざけ

  ある意味で反面教師のように捉えてきたことの正当さを確認する 。。

      「すべてはゴミなのだ」から

 

  ナシーム・ニコラス・タレブ『反脆弱性』上下 読み始め

   いよいよ

    「脱真実」「真実以降」 

      ポストトゥルース新自由主義

         来るべき無限悪夢のような時代を

            身近に考える 

 

  家人にプレゼントしたマーク・ボイルの新著『無銭経済宣言』も読まねば

  アナーコ・パンクを自称したバンド『CRASS』のことなどふと想う

  中世ロビン・フッド以来 イギリスは各種アウトローの故郷である