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「SOETSU YANAGI の本」について

 

父である柳楢悦が「ヤナギナラヨシ」であるように

 柳宗悦は やなぎむねよし が 本来の読み方

    しかし 

 欧文の著作では 自ら SOETSU YANAGI と綴っていることから

     「ムネヨシ」を 戸籍上の名前 いわば幼名と捉え

  佛教哲学者 民藝思想家 美學者としては  

        本阿弥光悦の如く 漢音による「ソウエツ」と考えると

              惑乱なく明快になる

     ところで つい先日 

 『日本の古本屋』を巡回していると

    とても珍しい本に遭遇した

《 ・(英文)The Responsibility of the Craftsman / Mystery of Beauty

  ・柳宗悦著刊 

  ・私家版限定200部 英語版 28頁 書名の2論文掲載

  ・昭27 ・1冊 ・3,000  》

 まったく未知の本だったが(だからこそ)さっそく註文した

 届いたものを逸るこころで開梱すると

    『           Ⅰ 

        The Responsibility of the Craftsman 

                Ⅱ 

            Mystery of Beauty    

     

            Soetsu Yanagi

             1952

         200 Copies Privately Printed

          Copyright by the Author         』

                 ・

     趣味の良い茶褐色の刷り色で表紙印刷された28頁の冊子

    本文も 同じ茶色で刷られ 用紙のクリーム色と似合っている

       サイズは縦 23cm 横 15.3cm

      発行者は 「the Archie Bray Foundation」

   柳の年譜を見ると 1952年5月31日から 1953年2月17日まで

 濱田庄司 志賀直哉 梅原隆三郎らと 欧州および米国への大旅行をしている

      滞在したのは 

    ローマ ポンペイ アッシジ フィレンツェ シエナ ヴェネツィア ミラノ ボロニア パリ マドリッド

    トレド リスボン ロンドン セント・アイヴス ダーティントン ロンドン

    アムステルダム ハーグ ストックホルム グーテボリ オスロー ヘルシンキ チューリッヒ 

    バーゼル ベルン パリ ロンドン 

    ニューヨーク スタンフォード ワシントン アッシュビル(ブラックマウンテン・カレッヂ) ニューヨーク

    ボストン ケンブリッジ デトロイト シカゴ ミネアポリス セントポール モンタナ州ヘレナ 

    サンタフェ ニューメキシコ ガラップ ロスアンジェルス パサデナ ハワイ ウエーキ島          

   ヴェネツィアで志賀・梅原と別れ ロンドンでリーチと合流したり 

     パリで志賀たちと再会したり ストックホルムでは式場隆三郎と合流したりするが

            六〇代にして八ヶ月半に及んだ旅行である

  どちらかと言えば欧州は見学と観光が多く 米国ではリーチや濱田との講習会 講演会を行うなど 実務が多い

       とりわけ興味深かい訪問先はノースカロライナ州アシュビルの「ブラックマウンテンカレッジ」である

   このバウハウスの流れを汲んだ小さな芸術学校に 柳は一〇日ほど滞在した

   《 (十月)十五日から二十六日までアッシュビルのブラックマウンテン・カレッヂに滞在、

     リーチ・濱田と講演・実演・上映・シンポジウム等を行う 》  と『柳宗悦全集』の年譜にある         

 1930年代前半 ジョセフ・アルバースらよって始まったにBlack Mountain College

            柳らが訪れた1952年当時 ここには

      ウィレム・デクーニング ジョン・ケージ マース・カニングハム バックミンスター・フラー 

   匆々たる教師が集まっていたし 生徒サイドには 

       コンバイン・ペインティングで華々しくデビューする直前  二十七歳のロバート・ラウシェンバーグもいた

  柳宗悦 濱田庄司 バーナード・リーチと ケージやフラー ラウシェンバーグらの 邂逅あるいはすれ違い 。。。。

                 想像するだけでも ワクワクする / 笑。

    さて同じ年譜の少し後にこう書かれている

  《 十二月、一日から七日までモンタナ州ヘレナに滞在し、講演・実演。》

             ここにアーチブレイ財団がある 

     Soetsu Yanagi『The Responsibility of the Craftsman  Mystery of Beauty 』

      を発行した the Archie Bray Foundation はモンタナ州ヘレナにあり 今もある

 そして驚くべきことに『The Responsibility Of The Craftsman: And Mystery Of Beauty 』は 

       限定初版の発行から六〇年を経た現在でも 少し形を変え刊行されつづけているのだ

   年譜の少し前に 《 十四日ミネアポリスへ。フィズパトリッチ家に宿る。手工藝展審査・TV出演を行う。 

         

    十八日から三十日までセント・ポールでセミナーを行い、リーチ・濱田とともに例の如く講演・実演・討論。

   「佛教美學」「工藝家の責任」の講演は大きな感銘を与える。》

 とあるから「The Responsibility of the Craftsman」は『工藝家の責任』

 

      「 Mystery of Beauty 」は『佛教美學』の講演原稿をテクスト化したものと思われる

     なお

      一九九二年の段階で編纂されている『柳宗悦全集』最終巻「補遺・未發表論稿等・年譜他』は

    いまから見ると不十分な内容であり 正確と言えない部分も含まれている が

   著作年表 著書目録ともに 『THE WAY OF TEA』1953 に関しての記述

 《 The Way of Tea (未確認)   Honolulu Academy of Arts 刊 發行月日不祥 》としかなく

      このアーチブレイ財団版に関しては その存在さえ「補足」されていない

  ぼくの知る限り 柳存命中の欧文著作は 國際文化振興會による『FOLK-CRAFTS IN JAPAN』1936

      および 1939年に翻訳刊行された そのスペイン語版 

         この二冊は 日本国内で印刷発行されている

    今回追加された一冊で 四冊を確認することができた 

   この本当に貴重な小冊子を届けてくれた 書苑よしむら にこころから感謝します

           ☆

        それにしても 

     柳宗悦の 詳細で正確な著作目録が必要だ

 筑摩書房は病み上がりで無理だとしても 学術文庫に収めている講談社や 多くの文庫を持つ岩波書店には

       柳宗悦著書目録を出す「責務」のようなものがあると思う。。。

        あるいは

  慶應義塾大学アート・センターが 瀧口修造土方巽 イサム・ノグチ 西脇順三郎油井正一とならんで 

         柳もアーカイヴ化してくれると ベストなのだが、、、、

   出来る限りの協力を惜しまないから 私家版 海外版を含む 浩瀚な『柳宗悦著作目録』が欲しい