中村元 先生 Toshihiko Izutsu 、そして ロバート・フランク 。

中村元 先生の『東洋人の思惟方法』上巻を読み始めた

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 (こころから敬慕 尊信している 柳宗悦井筒俊彦 も あるいは宮澤賢治も 遠慮なく無敬称だが

  中村元 氏にだけは なぜか つい「先生」を付けてしまう / 笑。)

上巻は1948年5月刊 定価 「参百八拾圓」

下巻は1949年7月刊 同  「七百圓」

同じ頃 昭和二十三(1948)年6月と9月にでた 柳宗悦の『民と美』上下各巻が 

並装版 各二百五十圓 

和紙による署名入特装版 上巻 三百圓 下巻 三百五十圓 

そのことを考えると この『東洋人の思惟』二巻は かなり高価な本だった

( 洞察力のあるひとは上巻と下巻の価格が一年の差で倍ほどにもなる

 敗戦後の急速な物価上昇による価格高騰/インフレーションに気づくだろう)

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もちろん 

現代日本人の 目を覆うほどの 

目先しか見ない 考えない この愚かさが なにに由来するのかを知るため

治癒 改善が可能かどうかを 考えるため

たとえ「泥縄」式であろうと

喫緊に読みたいのは 下巻に収められている「第二部 日本人・チベツト人の思惟方法」なのだが

「序論」〔七〕「東洋諸民族の思惟方法考察の順序」において

《 さて東洋諸民族の思惟方法の特徴を考察するに當つて、どの民族から開始して次にどれに及ぶべきか、

 その順序いかんといふことが、問題となるが、インド、シナ、日本の順序で考察するのが最も歴史的現實に即してゐると思ふ。

 インド民族は大體において西洋諸民族と人種的にも言語的にも風俗習慣の上でも同一系統に属するから、まづこの両者を

 對比してその思惟方法の上における差違を明らかにし、次にもともと全然別の民族であるシナ民族について論じ、

 最後にインドとシナの文化的影響を受けてゐる日本に及ぶのが順當であると思ふ。これに反して以上と逆の順序をたどつても

 よいが、日本にはインドとシナ、シナにはインド、 の文化的影響があるから、一一 これに反して中世以前のインドには日本、

 シナの文化的影響はほとんど絶無である 一一 、たとひ日本から始めるにしてもやはりインドとシナを問題とせざるを得ない

 ことになり、實際問題としてはやはりインド、シナ、日本の順序で考察することになつてしまふ。なほチベットは政治的経済的

 には大した重要性のない地方であるけれども、そこにはインド論理學が大規模に受容されたのであるから、思惟方法といふことを

 問題とする限り、チベット民族を看過することはできない。従つて附随的にチベット人の思惟方法をも考慮したい。》

 と 釘をさされている以上、上巻から 読まざるを得ない / 笑。

  それにしても

現代日本の 教養人(死語だろう、、)であっても 

ますます夜郎自大になっていく狭量な この島国が 文化的基礎基盤として 

唐と天竺   天竺と唐 

インドとチャイナの大きな影響下に形成されてきた事実を 認識する人が

   いったい今 幾人いるだろうか

無知ゆえとはいえ 急速に増えた あまりにも中国を軽視 敵視し 馬鹿にする奴らは 

日本は 青銅器 陶磁器から 紙 筆 墨 硯 仏教 稲作 、、、。 ありとあらゆる

ほとんどすべてと言っていいほど 多くの文化的事象を中国から学んだ事実 

その 冷厳な歴史性を 考えたことがあるのだろうか 

日本人は 自前の文字すら 造れなかった 事実とともに

長い時間をかけて 漢字を 万葉仮名に応用  そして 漢字から作られた 片仮名 ひらがな 。。。。

   先週末には

慶應義塾大学出版会から 井筒俊彦の『Language and Magic Studies in the Magical Function of Speech 』2011

Amazon.co.jp からは ROBERT FRANK 『YOU WOULD』2012 が 一緒に届いた

二冊とも シンプルで瀟洒な とても好ましい装幀 

しかも 両方とも版を重ねていない

二年経って初版がある井筒俊彦も 意外だったが 

ロバート・フランクも 重版しないことに やや 驚く

STEIDL は フランクの写真集に関して 初版を売り切ると はやばやと SOLD OUT 扱いに

そのエネルギーを 出版点数へと変換しているようだ

つぎつぎとでる 

間もなく九〇歳になる偉大な藝術家の

薄かったり 小さかったり する 愛らしい写真集 の群れ

とりわけ 

薄い冊子を箱に入れた「softcover, housed in a slipcase」シリーズは 簡素な写真集の白眉といえるほど美しい

ほかの二冊 『Park / Sleep 』と『Tal Uf Tal Ab』も架蔵することを ひそかに誓う / 笑。

☆ 『Language and Magic Studies in the Magical Function of Speech 』は 護符にしよう

   Jean Tinguely 『A Magic Stronger Than Death』に匹敵する 呪力と魔力

   真の思想家 藝術家が 神秘道のひと 魔法の遣い手 でなくて なんだと言うのか

  ぼくは五歳のとき オスカー・ワイルドの『幸福の王子』に目覚めてから 神秘道の子である