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私版本 / 特装本 / ephemera を中心とする 柳宗悦資料の蒐集に就て。

「もの」の蒐集 

とりわけ古い書籍の蒐集は 時空を経めぐる「旅」である

旅や遊行には 地図とコンパス あるいは時刻表が必要だ

さらに 直観力と胆力こそ 最重要 

だが これは 人それぞれの命数だから 言及しない 

できない

柳宗悦は『蒐集に就て』で こう書いている

《 蒐集は心理的には興味であり、生理的には性癖である。

是等が結び合ふ故、人間をた易く夢中にさせる。之を本

能の一つに歸してもよい。之が目覺めると心が忙しくな

る。眠つてゐる者に蒐集はない。冷たく見れば馬鹿らし

い事でもあろう。理性で片附ける者に蒐集はない。此道

に入れば誰も熱中する。知よりも意や情が忙しく働いて

くる。之が嵩じるにつれて人間は遠慮なく打算の外に出

て行く。蒐集は人間を勇敢にする。悪くとれば向ふ見ず

になつてくる。前進のみ知つて退却を知らない。退却す

れば蒐集の行為は止る。打算は人間をいくぢなくする。

無理しても買いたい程の熱が起らずば蒐集はものになら

ない。物を見ればこまつても買ひたいのである。こまる

事が尚蒐集の心をそゝるのである。こまらない様な者は、

此道では一かどの人間ではなかろう。毎月之々の豫算内

で購ふと云ふ様なのは、まだ奥義には達してゐない。そ

んなやり方は冷静だから出来るのである。蒐集には屡々

豫算への忘却が伴ふものである。一時は借金しても不義

理しても買ひたくさへなるのである。踏みはづして了つ

てはこまるが、かゝる無理を敢てする程熱中するのは、

蒐集が一層活々して来た證據とも云へる。常識的には愚

の骨頂だが、此愚かさに達してこそ妙味がある。人は易

々と此愚を嗤ふが、平氣で愚かな事をするのは、どこか

自分を忘れ得るいゝ性質があるからである。信者は凡て

の財物を平氣で神に捧げる。打算的な人間はこんな事を

しない。何か夢中になるものを有つてゐるのは、却て人

間らしさがあるからとも云へよう。すきまの無い人間に

はどこか非人間的な所がある。》

流麗を超えた鬱勃たる熱い文章に惹かれ ながなが引用したが 

さすがに 

蒐集の鬼神と菩薩 両方を識る「民藝」の鼻祖たりし 卓見 達観 卓説

              ☆ ☆ ☆

地図と羅針盤の話に戻ろう

2012年の段階で 柳宗悦の私版本や特装本 小冊子などの蒐集に 不可欠なのは

「補遺・未發表論考・年譜他」を収めた一九九二年発刊の全集最終巻 『柳宗悦全集 第二十二巻下』である

この巻 全二十五冊のなかで 遅れて出た上に 高価なこともあって 

当時から発行部数が少なく いまではほとんど入手困難

しかし しかし 

この資料を有するか否かで 蒐集の水準と可否が定まる それほど 必須 必要な資料だ

いまでは『柳宗悦全集』を全巻セットで購わない限り 手に入らないから

もし無謀にも これから宗悦私版本 や エフェメラを 蒐めようと思うなら

あるいは 柳の書誌研究を 志すなら

お奨めするのは まず

架蔵図書館から借りて「著書目録」「著作年表」部分 できれば「年譜」もコピーすること

他には参考資料として 

高橋啓介『向日庵・宗悦・志功の限定本』 湯川書房 1983年

季刊『暮しの創造 13号』「特集 理想の装幀」 創芸出版 1980年

『限定版手帖 第十二號』「柳宗悦 私版特集」 1954年

吾八版『これくしよん 第11号』「柳宗悦先生著作書目 / 私家版 限定版書目」 1961年

今村秀太郎 古通豆本・20『宗悦本と向日庵本』 1974年

などがある 

なかでも『限定版手帖』は柳自らによる序文があり

健康だった頃の著者による訂正追加を経た「柳宗悦私版本及限定版書目』は 貴重だし ひとつの基準となる

『これくしよん 第11号』は 柳の没後 すぐに出され

『限定版手帖』の「序」が「造本」と改題され 再録されている

さらに豆本『宗悦本と向日庵本』では「この世を美しく」と題されて 再々録されている

柳宗悦 と ジョージ・ナカシマ そして すぐれた本の存在がなかったら 

この世は 生きるに価しないほど 味気なく

(ときどき癇癪を起こすとはいえ)「健気に 明るく」/ 笑。 生きてこれたかどうか 心許ない 。。。

ふたりは 精神の手本であり 霊性の師であり 

困難な時代を生きる上での 方向磁針 であり 不動の北極星だった

それにしても この夏は 柳関係資料の蒐集が進んだ

主だったものだけでも

サセックスの古書肆から『FOLK - CRAFTS IN JAPAN』By SOETSU YANAGI KOKUSAI BUNKA SHINKOKAI 1936

セントルイスからは Soetsu Yanagi『The Way of Tea』Honolulu Academy of Arts 1953

大阪の古書肆からも『百周忌紀年 ブレイク作品文献展覧会目録』署名入り 1927年刊 が届いた。

『ブレイク作品文献展覧会目録』は扉に

「本目録は五百部を 限り印行し本冊は そのNo. 20 也」 とあり「柳 宗悦」 と「20」がペン字で記されている

これから午後には 神戸から『民と美 上下』和紙による特製本 * が届くはず

ウーン これだから 艱難との二人三脚 

自力道と他力道のあいだにある わずかな杣道を行く  

愉悦の千日ならぬ万日回峰 蒐集はやめられない / 笑。

                 ☆

* 『限定版手帖』には《 特製本 各二百冊 和紙 》etc .

奥付には「特製」とある。各冊に「宗悦」の署名入り

京都 靖文社 1948年刊