黒い《ヴンタ》或いはフィリップ・スタルクの 、。

十日ほど前のこと 

もはや広告の束といった方が適切だろう あれこれの雑誌を

立ち読みというか(一冊あたり三〇秒ほどで十冊ほどを覧る)

いわばZapping する調子で 素早く観閲していると 

黒いセブンスターが 期間限定で発売されるという

煙草広告に 眼がとまった。

見ると真っ黒い箱にBlack Editionと銀文字があり

例の「喫煙はあなたにとって肺がんの原因の、、、」云々は

そのまま白抜きになっている。

なかなか 面白い。 

過度な喫煙習慣による煙草中毒から足を洗ってもう十三年になるし

ぼくの好きな煙草ではなかったが

ネーミングやパッケージが比較的モダンだったため

当時は「ヴンタ」とか呼ばれて

喫煙を始めたばかりの 全共闘系の女の子たちに人気があった

(あのチャコールフィルター独特の匂いがぼくは厭だった、、)

そういえば フィリップ・スタルクがリ・デザインした

黒いアルクールのグラスセットは 買えないけど

これなら 買える/笑。

若いひとには 信じられないだろうが

老いを悟り

すべては仮初めにすぎないことを知った「達人」になると 

黒いバカラも黒いヴンタも 

印象を愉しむ 混淆する記憶を愛でる

記憶の 旧くて深い回路へ繋がる「媒材/メディウム」という意味では 

本質的にも観念的にも さほど変わらない、、、。

いま 机のうえに置いて黒いヴンタを眺めているが

スタルクのバカラまで心象的に借景できて

これを見る度に「黒いアルクール」を想い出すだろう

ああ なんだか随分 儲かってしまった/笑。

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いま調べると

Seven Stars が発売されたのは1969年2月1日から

2006年1月から売られている「セブンスター・レボ・ウルトラライト・メンソール・ボックス」は

なんとタールが四分の一以下 ニコチンは六分の一である。

「黒いヴンタ」はむかしと同じ ニコチンとタール量だった