新・唐草模様とLOUIS VUITTON

偶々手にした『美術手帖』2003年1月号に‘ルイ・ヴィトン村上隆のコラボ’と称して93色を使ったという鞄屋の新商品の写真があった。

[eye love monogram]・・だそうだ。

タタミゼでもジャポニスムでもその逆輸入でも再利用でも良いけど。カネ臭いこと夥しかったのは事実。

そのマネー臭さプンプンのバッグ 誰が 一番似合うか・・

しばし考えて

花魁行列の 太夫が持ったら屹度似合うだろうな そう想った。

悪意ではなく そう思った。

ボクに言わせると ヴィトンは「土人が欲しがるバッグ」である。

土人的から 女郎的への マーケットの転換。

 

これは出世なのか はたまた苦界に身を沈めたと考えるべきか(笑)。

いま 大酒を飲みながら 考えております。

ところで あまりにも藝術を舐めないでね 村上くんとブトン屋の皆さん。

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かつて80年代の「泡沫景気」と呼ばれた時代、

小田急線の電車の中で考えた。

この一つの箱の中に3メートルに一人ずつ、ルイ・ヴィトンの鞄をもった女性がいる。

(中にはクラッチバッグを脇に抱えた親父まで居た)

一車両全体では

少なくとも150人や200人はいるだろう。

新宿について駅を出るまで

出てから伊勢丹あたりまでに

私は大袈裟ではなく、

1000個の

仏蘭西製ビニール鞄を見た。

このどう考えても異常な現象

その理由を考えよう。

 

沈思黙考。 

 

三分ほどで答えは出た。

これは江戸時代に始まる。

 

もう一つの原因は明治。

文明開化

鹿鳴館

上等舶来が

百年余を経て

漸く民衆のところまで降りてきたのだ。

鹿鳴館の末端への浸透。

庶民の舞踏会。

それがこのルイ・ヴィトン人気の主要な理由。

しかし、

それだけではこの紋様の異常な人気の理由を解き明かしたことにはならない。

もうひとつの隠れた理由がある。

江戸時代誰もが持っていた

唐草模様の風呂敷への

無意識の郷愁であるだろう。

ルイ・ヴィトンの鞄の向こう側に人々は、

江戸を感じている。

安心する世界。

黒船のこない世界。

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ごく最近。

ミルチャ・エリアーデ主編

エリアーデ・オカルト事典』

に興味深い文章があったので引用しよう。

《魔除けとお守り》

セオドア・H.ガスター

「魔よけとは、魔力がこもっていると信じられているもので、身につけたり、住まい、納屋、仕事場などに飾ったりして、災厄、病気や、悪魔であれ人間であれ、悪意を持った存在からの攻撃を寄せつけないようにするものである。」

その条件に適うものの一つとしてガスターは、

(8)「外国産のエキゾチックなもの。

それらは当該社会では普通は手に入らない力を含み持っていると考えられている。」

を挙げている。

「最期に、エキゾチックなものを魔除けやお守りに使うことに関して、言及に値する興味深い事実がある。

筆者は何年も前にアフリカのシャーマンが儀式の時に身につける衣装を数多く調べる機会があったが、そのうちの幾つかには、胸のところに着けるポーチが含まれていた。

それらを開けてみると、中には主として、

ヨーロッパ製のヘアピン、

ハサミ、タバコの吸い殻、

ロンドンのバスの乗車券、

それに類する外国の日用品が入っていた。

こうしたものに魔力があると考えられていたのだった。」

私たちは《土人》とそう遠いワケじゃない。

2002年   七月七夕に。

宝蔵館/刊