都市国家の“馬と騎手”/Marino Marini

イタリア製の靴が どうしてあれほど履き易いかというと〔凡ての路はローマに通ず〕以来の歴史が靴の文化を育み 歩きやすい靴を産んだからだとの説がある。なるほどと想う。

文化は一朝一夕には出来ない。

フェラーリの卓越性にしても 都市国家の歴史と深い関係がある事だろう。

“飛び跳ねる馬”フェラーリの領袖エンツォはピニン・ファリーナ製ボディを纏った自分の400Superamerica Coupeを駆ってモデナとミラノ間の170kmを僅か41分で走りきると云われていた。

栄光の60年代初頭のこと。既に彼は60歳を超えていた。

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日本は欧米を手本にしようとして150年を過ごしてきたが

欧州にあって この国が全く真似られなかった物の一つは

広場と市民 その思想だとおもう。

その広場の中心には決まって石像/銅像など彫像が据えられている。

マリノ・マリーニの“馬と騎手”もその様な歴史の中で育まれ 生まれた。

広場にある 飛翔するような“馬と騎手”像。

子供でも 婦人でも 或いは人生の大半を逐えた老人でも 病んでいる人も 

それを眺める際に それぞれイメージする事があるだろう。

 

今 此処にあることの 歓び 哀しみ 苦しみ・・・希望・・

想像するだけでも 何だか胸が熱くなりそうだ。

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マリーニは多くの絵も描いたが それより更にたくさんの版画を残した。

ムルロー工房などによるリトグラフが主たる技法だが 平面の馬の形と色が 大変に好い。彫刻とは違う良さがある。    

     

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しかし画家にも人気の波があって 80年代半ばには

ハーバート・リードが序文を書いた500頁を超える“CompleteWorks Of MARINO MARINI”がイエナ書店でゾッキ本扱いで安売りされていた。数千円だったと思う。重たくて荷物になると思ったが義憤の様な物を感じて買った。それが何年か前の丸善のカタログでは180000円と高額な価格が付いていた。

数日の間 ボクは何だかとても儲かったような気がしてご機嫌だった(笑。

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フィレンツェのマリーニ美術館。