Liberty print/リバティ百貨店

殺伐とした時世だからこそ

『モードに見るプルースト

(長谷川富子著・青山社)なんて本を

典雅に斜め読みしていたら

写真にこんなキャプションが。

《リバティのネクタイに椿の花をつけ、気取っている

プルースト(1891) 》

ホホーッと感心していると

本文にはこんな文章も。

〈二〇歳の時の写真が残っている。当時まだ学生だったが、すでにサロンに出入りしており、リバティのネクタイにカメリア(椿)を胸につけてめかし込んでいる。当時イギリス・リバティ商会が売り出した、しなやかで幅広のネクタイは、天然染料による独特な色彩で人気があった。彼はこのネクタイが自慢だったにちがいない。〉

リバティプリントのネクタイねー

椿の花こそ着けてはいないが

お懐かしやと懐旧におもわず我を忘れて耽る。

幅広のネクタイは或る青山の画廊勤めの青年に

どうしても欲しいと請われて差し上げたけど、

大好きだった花柄の蝶ネクタイは何処かにあるはず。

探せども凡庸な蝶タイが出てくるばかり

嗚呼そうだ

若くもないしもう締める機会もないだろうと

何処かに大切に仕舞った記憶……

愚図なイヌじゃあるまいに

大事に隠して出てこない(笑)。

それにしても

若かった……リバティプリントの蝶ネクタイ

趣味の良い花柄が似合う日々もあった……

有り難うプルースト

有り難う長谷川さん。

お笑い下さいな汚い爺の懐旧譚。

 遙か四半世紀余も昔のお噺。